際立った美味しさではなく、他にない特徴があるということでもないけれど、でも、ときどき食べたくなる味があります。この店もそんなひとつ。久しぶりに訪れても、安心感と安定感がある。そんな街の食堂です。
東京・神保町は古本の町、カレーの町として有名ですが、さまざまな飲食店が軒を連ね、古くから学生やサラリーマンなどの空腹を満たしてきた店も多くが健在です。1960年開店、白山通りに面した洋食「キッチングラン」もそのひとつ。カウンターだけの店内で、料理はとんかつ、ハンバーグ、しょうが焼き、メンチカツ。これを単品で定食にするか、とんかつと生姜焼きなどの組み合わせで定食にするか、選択肢が潔いのです。
他の組み合わせも試してみたいのですが、たまにしか行かないので、いつもハンバーグとしょうが焼きの組み合わせにしてしまいます。シンプルな白い丸皿に大きな煮込みハンバーグと濃いめの色合いのしょうが焼き。せん切りキャベツにきゅうりがちょろっと添えられて、ナポリタンもしっかり付いています。いいですね、このビジュアルとバランス。白飯をがっつり食べたくなる黄金バランスです(茶色だけど)。
ハンバーグはもちっとした歯応えがあり、肉感たっぷり。適度な濃さのソースをまとって白飯とよく合います。しょうが焼きはちょっと濃いめの味付けと香ばしさでこちらもご飯を呼びます。ハンバーグとしょうが焼きを交互に食べ進み、時折せん切りキャベツを挟んでリフレッシュしたり、ナポリタンを食べて柔らかな甘味をアクセントにしたり。あっという間にご飯がなくなってしまいます。
正直、際立った美味しさではありません。他にない特徴があるということでもありません。でも、ときどき食べたくなるんですよね。学生時代に空腹を満たしたような懐かしい感覚を得られること、いついっても変わらぬ味がある安心感が調味料となっているのでしょう。満腹と満足と安心。街の食堂はそれが魅力ですよね。
ちなみに、かつてこの路地には「キッチングラン」、ラーメンの「さぶちゃん」、定食の「近江や」の3軒が並んでいました。実は兄弟3人がそれぞれ店をやっていました(僕もかつて行きました)。今は「キッチングラン」しか残っていませんが、ここに来ると、そんな時代のことも思い出して、ノスタルジーを感じます。それも味のうちですね。
文・写真:植野広生
東京・神保町は古本の町、カレーの町として有名ですが、さまざまな飲食店が軒を連ね、古くから学生やサラリーマンなどの空腹を満たしてきた店も多くが健在です。1960年開店、白山通りに面した洋食「キッチングラン」もそのひとつ。カウンターだけの店内で、料理はとんかつ、ハンバーグ、しょうが焼き、メンチカツ。これを単品で定食にするか、とんかつと生姜焼きなどの組み合わせで定食にするか、選択肢が潔いのです。
他の組み合わせも試してみたいのですが、たまにしか行かないので、いつもハンバーグとしょうが焼きの組み合わせにしてしまいます。シンプルな白い丸皿に大きな煮込みハンバーグと濃いめの色合いのしょうが焼き。せん切りキャベツにきゅうりがちょろっと添えられて、ナポリタンもしっかり付いています。いいですね、このビジュアルとバランス。白飯をがっつり食べたくなる黄金バランスです(茶色だけど)。
ハンバーグはもちっとした歯応えがあり、肉感たっぷり。適度な濃さのソースをまとって白飯とよく合います。しょうが焼きはちょっと濃いめの味付けと香ばしさでこちらもご飯を呼びます。ハンバーグとしょうが焼きを交互に食べ進み、時折せん切りキャベツを挟んでリフレッシュしたり、ナポリタンを食べて柔らかな甘味をアクセントにしたり。あっという間にご飯がなくなってしまいます。
正直、際立った美味しさではありません。他にない特徴があるということでもありません。でも、ときどき食べたくなるんですよね。学生時代に空腹を満たしたような懐かしい感覚を得られること、いついっても変わらぬ味がある安心感が調味料となっているのでしょう。満腹と満足と安心。街の食堂はそれが魅力ですよね。
ちなみに、かつてこの路地には「キッチングラン」、ラーメンの「さぶちゃん」、定食の「近江や」の3軒が並んでいました。実は兄弟3人がそれぞれ店をやっていました(僕もかつて行きました)。今は「キッチングラン」しか残っていませんが、ここに来ると、そんな時代のことも思い出して、ノスタルジーを感じます。それも味のうちですね。
文・写真:植野広生