夏の酷暑のある日、京都を歩き回ってたっぷり汗をかき、疲れ切ったところで飛び込んだのが「河道屋」。冷たいビールと冷たいだしと暖かいだしが体に染み渡り、元気回復、生き返ったのでした。
京都の暑さは独特のような気がします。山に囲まれ川が流れ、木造の家屋が立ち並ぶ涼しげな風景がありながら、容赦ない暑さが体にまとわりつきます。そんな中を朝から歩き回り、体力と気力の限界に近づいたお昼時、「河道屋」が近いことを思い出し、向かいました。
京都らしい、奥行きが深く風情ある造りの店は、そもそも桓武天皇の平安京遷都と共に京都に移り住み、元禄時代には菓子を売る傍で蕎麦を供していたという老舗(今も蕎麦ぼうろを販売しています)。
席に案内され、まずは瓶ビールとさしみ湯葉、あなご(煮穴子)を注文。冷えたビールが火照った身体を駆け巡ります。山葵醤油で食べるさしみ湯葉は濃厚ななめらかさで、あなごは山椒の鮮烈な香りと濃い味わいでビールのほろ苦さと甘味を引き立てます。
やっと暑さも落ち着いて、さて蕎麦はどうしようかと考えたところで「お後はどうなさいますか?」と中居さん。絶妙のタイミング。
「河道屋」の蕎麦は深い味わいのだしが持ち味。ここは、冷たいだしで胃と体を沈めつつ、温かいだしで口と心をウォーミングアップさせよう。ということで、季節ものの“冷かけすだち蕎麦”と“鴨なんば”を注文しました(蕎麦は小ぶりなので二つは軽くいけます)。
冷かけすだち蕎麦のだしは強い旨味がありつつ爽快な喉越し。そこにすだちの風味が加わりさらに爽やかにクールダウンできました。
そして締めは鴨なんば。暑い時には冷たいものを食べたくなりますが、冷たいものを多く入れている体には温かいものが沁みるんですよ。滋味あふれるだしに鴨の旨味やねぎの甘味も加わり、軽やかなのにじわりと広がる旨味が深い。
体は冷えたし、気力は暖まったし、暑い中だけれど、また歩き回れそう!
(そしてまた汗をかいてどこかでビールを呑んで冷やし、また汗をかいて……エンドレスの予感)
文・写真:植野広生
京都の暑さは独特のような気がします。山に囲まれ川が流れ、木造の家屋が立ち並ぶ涼しげな風景がありながら、容赦ない暑さが体にまとわりつきます。そんな中を朝から歩き回り、体力と気力の限界に近づいたお昼時、「河道屋」が近いことを思い出し、向かいました。
京都らしい、奥行きが深く風情ある造りの店は、そもそも桓武天皇の平安京遷都と共に京都に移り住み、元禄時代には菓子を売る傍で蕎麦を供していたという老舗(今も蕎麦ぼうろを販売しています)。
席に案内され、まずは瓶ビールとさしみ湯葉、あなご(煮穴子)を注文。冷えたビールが火照った身体を駆け巡ります。山葵醤油で食べるさしみ湯葉は濃厚ななめらかさで、あなごは山椒の鮮烈な香りと濃い味わいでビールのほろ苦さと甘味を引き立てます。
やっと暑さも落ち着いて、さて蕎麦はどうしようかと考えたところで「お後はどうなさいますか?」と中居さん。絶妙のタイミング。
「河道屋」の蕎麦は深い味わいのだしが持ち味。ここは、冷たいだしで胃と体を沈めつつ、温かいだしで口と心をウォーミングアップさせよう。ということで、季節ものの“冷かけすだち蕎麦”と“鴨なんば”を注文しました(蕎麦は小ぶりなので二つは軽くいけます)。
冷かけすだち蕎麦のだしは強い旨味がありつつ爽快な喉越し。そこにすだちの風味が加わりさらに爽やかにクールダウンできました。
そして締めは鴨なんば。暑い時には冷たいものを食べたくなりますが、冷たいものを多く入れている体には温かいものが沁みるんですよ。滋味あふれるだしに鴨の旨味やねぎの甘味も加わり、軽やかなのにじわりと広がる旨味が深い。
体は冷えたし、気力は暖まったし、暑い中だけれど、また歩き回れそう!
(そしてまた汗をかいてどこかでビールを呑んで冷やし、また汗をかいて……エンドレスの予感)
文・写真:植野広生