dancyu本誌から
dancyu10月号『一生食べ続けたい「ひと皿」』絶賛発売中!

dancyu10月号『一生食べ続けたい「ひと皿」』絶賛発売中!

作家や映画監督、料理人や料理家、職人、生産者……さまざまなジャンルの99人に、一生食べ続けたい料理、一生つくり続けたいレシピを聞きました。「この人にとっては、このひと皿なのか!」とか「皿の奥にはこんなドラマがあったのか」など、その人の人生が垣間見える瞬間も。読み応えのある1冊となっています!

人生で最も食べてきた

表紙
P10-11
P59
P62
dancyu2023年10月号
実家が焼きそば屋だったので、子供の頃はよく焼きそばを食べていました。自家製麺、木桶で蒸してから焼く素朴なソース焼きそばでしたが、今思うと、しみじみと旨かった。大学生になると、ほぼ毎日徹マンで、明け方にはふらふらと𠮷野家に行き、「並、玉、味噌汁」と呪文のように注文していました。とはいえ、朦朧とした頭で「二口目は七味をご飯にふって肉で巻いて玉子をつけて食べてみるか……」などと、その頃からなんとなく食べ方を工夫していました。
社会人になると、毎日二日酔い。なぜか昼にとんかつを食べるとすっと治りました。毎日のようにとんかつを食べていたことになりますが。築地市場に通うようになると、場内の洋食「豊ちゃん」で“オムハヤシ、カニクリームコロッケと味噌汁付けて”か、中華「やじ満」で、“野菜そば、焼売半個(2個盛り)”が定番に。「豊ちゃん」は店がなくなりましたが、「やじ満」は今も豊洲市場で健在で、“野菜そば、麺少なめ、ワンタン付けて”が新定番になったものの、注文しなくても出てくるくらい“焼売半個”は毎回、必ず食べています。さらに、パスタも生姜焼きもポテサラも赤身肉のステーキもハンバーグもグラタンも鮪赤身のヅケもパン・コン・トマテもかなり食べてきました。人生で最もたくさん食べていて、今後も一生食べ続けたいひと皿は……難しいですね。ブリア=サバランではないけれど、それは人生を語るのと同じかもしれません。

dancyu編集長 植野広生
dancyu2023年10月号
dancyu2023年10月号
特集:一生食べ続けたい「一皿」
A4変型判(148頁)
2023年9月6日発売/980円(税込)

写真:三東サイ