築地のときも、豊洲に移転しても、市場に行くと中華の店「やじ満(やじま)」に寄ってご飯を食べます。多彩なメニューが揃っているのですが、結局いつも同じものを頼んでしまうのでした……。
市場の食堂、というと鮨や海鮮丼を思い浮かべる人が多いと思いますが、市場で働く人や買い出し人は、魚介は嫌と言うほど見ているし、体力勝負なので、比較的空いていてがっつり食べられる中華や洋食の店で食べる人が多いのです(鮨店などは観光客が行列をつくるので、忙しい人たちはさっとすぐに食べられる店に行くという現実的な事情もあります)。それも、毎日同じ店で同じものを食べる強者(?)も多いのです。店側も慣れたもので、常連の顔が見えると、店に入る前にいつもの料理をつくり始めたりします(近年は、直接市場に買い出しに来る人も減り、そういう強者常連も徐々に少なくなっているようですが)
僕も築地時代から時折市場に行って仲卸さんと話をしたりしています。豊洲に移ってからは少し足が遠のいてしまいましたが、それでもたまに行くと、築地時代から馴染みの中華料理「やじ満」(「やじま」と読みます)の暖簾をくぐります。名物である夏のあさりそば、冬の牡蠣そばをはじめ、冷やし中華、チャーハン、生姜焼き、油淋鶏、そしてみんな大好きな焼売、さらには日替わりの“メニューにないメニュー”まで、素晴らしく豊富な品揃え。ここも毎日同じものを食べる人がいて、看板娘のひとみちゃんが常連の顔を見つけるなり、「ニラそば、ねぎ抜き、スープホワイト、麺硬め!」などといつもの注文を厨房に通します(「スープホワイト」はスープを塩味にすることです)。そう、常連はそれぞれが好みでカスタマイズするのです。
僕はたまにしか行けないので、今日はポークライスにしようか、麻婆丼かな。ソース焼きそばもいいな……と迷うのですが、結局いつも同じものを頼んでしまいます。それが「野菜そば、麺少なめ、ワンタントッピング。焼売半個」です。これはタンメン(なぜか「野菜そば」と呼ぶ人が多い)の麺を減らしてもらい、ワンタンを入れてもらうもの。そして、焼売半個は千切りキャベツとともに小皿に2個のったものです(焼売「一皿」には4個のっていて、でもみんなご飯や麺類と併せて頼むので、2個で頼む人が多い)。いつも同じものを頼んでいるから、いつしか椅子に座っただけで自動的に「焼売半個」が出てくるようになりました。この焼売が大ぶりで程よい食感の中にもしっかり肉を感じられて旨い。さらに、焼売にはソースをかけるのが市場のデフォルトで、僕も一個はなにもつけずに、もう一個にはソースをかけて。なにもつけない方は肉の旨味が、ソースをかけた方は肉の甘味が際立ちます。どちらも美味。
そして、メイン(?)の野菜そば+ワンタントッピング。いつものように麺から食べると、おお!今日のゆで方はベストに近いのでは!?最初は少し硬めに感じるものの心地よい歯応えがあり、食べ進むうちにちょうどよい硬さになり、食べ終えるまで麺がだれることがないことが予想できる状態(実際そうでした!)。塩ベースで豚肉の脂や野菜の甘味が上品にまとまった澄んだスープの加減もいい!ワンタンのゆで加減もちょうどよく、まろやかな口当たりが全体のトーンにばっちり合っている。
そのまま最後まで美味しく食べられるのですが、途中でラー油の“濃いとこ”(ラー油の下部に沈殿した唐辛子などの部分)を少し散らし、ちょっと辛味のアクセントをプラス。肉や野菜のまろやかな旨味がすっと立ち上ります。
ああ、美味しかった!また来ます!
(また同じものを頼んでしまうのだろうな……)
文・写真:植野広生
市場の食堂、というと鮨や海鮮丼を思い浮かべる人が多いと思いますが、市場で働く人や買い出し人は、魚介は嫌と言うほど見ているし、体力勝負なので、比較的空いていてがっつり食べられる中華や洋食の店で食べる人が多いのです(鮨店などは観光客が行列をつくるので、忙しい人たちはさっとすぐに食べられる店に行くという現実的な事情もあります)。それも、毎日同じ店で同じものを食べる強者(?)も多いのです。店側も慣れたもので、常連の顔が見えると、店に入る前にいつもの料理をつくり始めたりします(近年は、直接市場に買い出しに来る人も減り、そういう強者常連も徐々に少なくなっているようですが)
僕も築地時代から時折市場に行って仲卸さんと話をしたりしています。豊洲に移ってからは少し足が遠のいてしまいましたが、それでもたまに行くと、築地時代から馴染みの中華料理「やじ満」(「やじま」と読みます)の暖簾をくぐります。名物である夏のあさりそば、冬の牡蠣そばをはじめ、冷やし中華、チャーハン、生姜焼き、油淋鶏、そしてみんな大好きな焼売、さらには日替わりの“メニューにないメニュー”まで、素晴らしく豊富な品揃え。ここも毎日同じものを食べる人がいて、看板娘のひとみちゃんが常連の顔を見つけるなり、「ニラそば、ねぎ抜き、スープホワイト、麺硬め!」などといつもの注文を厨房に通します(「スープホワイト」はスープを塩味にすることです)。そう、常連はそれぞれが好みでカスタマイズするのです。
僕はたまにしか行けないので、今日はポークライスにしようか、麻婆丼かな。ソース焼きそばもいいな……と迷うのですが、結局いつも同じものを頼んでしまいます。それが「野菜そば、麺少なめ、ワンタントッピング。焼売半個」です。これはタンメン(なぜか「野菜そば」と呼ぶ人が多い)の麺を減らしてもらい、ワンタンを入れてもらうもの。そして、焼売半個は千切りキャベツとともに小皿に2個のったものです(焼売「一皿」には4個のっていて、でもみんなご飯や麺類と併せて頼むので、2個で頼む人が多い)。いつも同じものを頼んでいるから、いつしか椅子に座っただけで自動的に「焼売半個」が出てくるようになりました。この焼売が大ぶりで程よい食感の中にもしっかり肉を感じられて旨い。さらに、焼売にはソースをかけるのが市場のデフォルトで、僕も一個はなにもつけずに、もう一個にはソースをかけて。なにもつけない方は肉の旨味が、ソースをかけた方は肉の甘味が際立ちます。どちらも美味。
そして、メイン(?)の野菜そば+ワンタントッピング。いつものように麺から食べると、おお!今日のゆで方はベストに近いのでは!?最初は少し硬めに感じるものの心地よい歯応えがあり、食べ進むうちにちょうどよい硬さになり、食べ終えるまで麺がだれることがないことが予想できる状態(実際そうでした!)。塩ベースで豚肉の脂や野菜の甘味が上品にまとまった澄んだスープの加減もいい!ワンタンのゆで加減もちょうどよく、まろやかな口当たりが全体のトーンにばっちり合っている。
そのまま最後まで美味しく食べられるのですが、途中でラー油の“濃いとこ”(ラー油の下部に沈殿した唐辛子などの部分)を少し散らし、ちょっと辛味のアクセントをプラス。肉や野菜のまろやかな旨味がすっと立ち上ります。
ああ、美味しかった!また来ます!
(また同じものを頼んでしまうのだろうな……)
文・写真:植野広生