高知で友人に連れて行ってもらった店は、季節の食材を用いた和洋中、多彩な料理が揃い、どれも丁寧な手間が感じられる美味しさ。さらに、最後の“締め”が意外な(?)一品でした……。
高知「おきゃく大使」の植野です。
「おきゃく」とは高知独特の“宴”のことで、冠婚葬祭、何かあればおきゃくになるし、なにもなくても人が集まるとすぐにおきゃくになります。大皿に多彩な料理を盛り込む「皿鉢(さわち)料理」で酒を飲む昔ながらの本式のおきゃくが基本ですが、今では居酒屋で飲んでもおきゃくと言います。僕は高知に縁もゆかりもなかったのですが、おきゃくの楽しさ、人の楽しさに惚れ込んでいくうちに「おきゃく大使」を委嘱されることになりました。
そんなわけで、高知に“帰る”と、友人たちが「おかえり!」と言ってくれて、おきゃくを催してくれます。
今回、友人がおきゃくをしてくれたのは、「和魂洋菜 うるう」という店。カツオゆの酢(柚子酢)たたき、うつぼの唐揚げ、うなぎの白焼き、くじらウネス(顎から腹にかけての部分)の甘辛たれ焼き、四万十鶏の唐揚げ、土佐あかうしのハンバーグ……地元の食材を用いた多彩な料理が揃っています。
店のおすすめを中心にいろいろ食べたのですが、印象的だったのが“野菜のお浸しの盛り合わせ”。きゅうり、山芋、ヤングコーン、セロリ、いんげん、ズッキーニ、オクラ、空豆が盛られていましたが、それぞれ丁寧に下ごしらえがされ、程よいだしが感じられます。山芋とヤングコーンには焼き目をつけるなど香りと食感のアクセントが楽しい。そのままでも十分美味しいのですが、添えられた酒盗マヨネーズをつけて食べると、また酒が進みます。軽やかな野菜料理ですが、メイン感のある一皿でした。
お造り盛り合わせ、ゴーヤーチャンプルー(ソースのように滑らかな卵でゴーヤーと豚肉を和えている)、コチととうもろこしの天ぷら、ポテサラ生ハムカツ(刻んだ生ハムを混ぜたポテサラに衣をつけて揚げたもの)などをつまみながら酒を飲み、さて締めはご飯ものか、麺類にしようか、と考えていたら、友人が「締めではないけど、是非これを締めに食べて!」と薦めてくれたのが、品書きの「締め」コーナーではなく「野菜料理コーナー」にある“和美野菜(細切り野菜ソーメン風)”。
大きな器に入って出てきたのは、だしの中にきゅうり、にんじん、みょうがなどの野菜の細切りがたっぷり入り、そのうえに山芋の千切りをのせて胡麻をふったもの。“締め”というにはあまりにも野菜感が強く、頭の中に「?」が三つぐらい浮かんだのですが、お椀に取り分けて食べると……ああ、なんて爽快!軽やか!すっきり旨い!だしの深い味わいが野菜のシャキシャキ感を引き立て、さらに山芋が全体をまろやかに包んで胡麻の香りとともに口の中にやさしい旨味が広がります。野菜の千切りが麺のような食感になるので、確かに“締め”としての満足感もある!そしてたくさん食べても軽い!
和食では、野菜を細切りにして塩味の汁に入れる沢煮椀という料理がありますが、これは冷製沢煮椀のような料理で、さらに爽快感と食べ応えがあるのがいいですね。
これまで飲んだ後の締めにはご飯ものか、麺類か、が常識でしたが、こんな素敵な“締め”があるとは!人生で最も軽やかで爽やかな“締め”でした。
あまりにも爽快であったため、その後、バーに飲みに行ってしまいましたが……。
文・写真:植野広生
高知「おきゃく大使」の植野です。
「おきゃく」とは高知独特の“宴”のことで、冠婚葬祭、何かあればおきゃくになるし、なにもなくても人が集まるとすぐにおきゃくになります。大皿に多彩な料理を盛り込む「皿鉢(さわち)料理」で酒を飲む昔ながらの本式のおきゃくが基本ですが、今では居酒屋で飲んでもおきゃくと言います。僕は高知に縁もゆかりもなかったのですが、おきゃくの楽しさ、人の楽しさに惚れ込んでいくうちに「おきゃく大使」を委嘱されることになりました。
そんなわけで、高知に“帰る”と、友人たちが「おかえり!」と言ってくれて、おきゃくを催してくれます。
今回、友人がおきゃくをしてくれたのは、「和魂洋菜 うるう」という店。カツオゆの酢(柚子酢)たたき、うつぼの唐揚げ、うなぎの白焼き、くじらウネス(顎から腹にかけての部分)の甘辛たれ焼き、四万十鶏の唐揚げ、土佐あかうしのハンバーグ……地元の食材を用いた多彩な料理が揃っています。
店のおすすめを中心にいろいろ食べたのですが、印象的だったのが“野菜のお浸しの盛り合わせ”。きゅうり、山芋、ヤングコーン、セロリ、いんげん、ズッキーニ、オクラ、空豆が盛られていましたが、それぞれ丁寧に下ごしらえがされ、程よいだしが感じられます。山芋とヤングコーンには焼き目をつけるなど香りと食感のアクセントが楽しい。そのままでも十分美味しいのですが、添えられた酒盗マヨネーズをつけて食べると、また酒が進みます。軽やかな野菜料理ですが、メイン感のある一皿でした。
お造り盛り合わせ、ゴーヤーチャンプルー(ソースのように滑らかな卵でゴーヤーと豚肉を和えている)、コチととうもろこしの天ぷら、ポテサラ生ハムカツ(刻んだ生ハムを混ぜたポテサラに衣をつけて揚げたもの)などをつまみながら酒を飲み、さて締めはご飯ものか、麺類にしようか、と考えていたら、友人が「締めではないけど、是非これを締めに食べて!」と薦めてくれたのが、品書きの「締め」コーナーではなく「野菜料理コーナー」にある“和美野菜(細切り野菜ソーメン風)”。
大きな器に入って出てきたのは、だしの中にきゅうり、にんじん、みょうがなどの野菜の細切りがたっぷり入り、そのうえに山芋の千切りをのせて胡麻をふったもの。“締め”というにはあまりにも野菜感が強く、頭の中に「?」が三つぐらい浮かんだのですが、お椀に取り分けて食べると……ああ、なんて爽快!軽やか!すっきり旨い!だしの深い味わいが野菜のシャキシャキ感を引き立て、さらに山芋が全体をまろやかに包んで胡麻の香りとともに口の中にやさしい旨味が広がります。野菜の千切りが麺のような食感になるので、確かに“締め”としての満足感もある!そしてたくさん食べても軽い!
和食では、野菜を細切りにして塩味の汁に入れる沢煮椀という料理がありますが、これは冷製沢煮椀のような料理で、さらに爽快感と食べ応えがあるのがいいですね。
これまで飲んだ後の締めにはご飯ものか、麺類か、が常識でしたが、こんな素敵な“締め”があるとは!人生で最も軽やかで爽やかな“締め”でした。
あまりにも爽快であったため、その後、バーに飲みに行ってしまいましたが……。
文・写真:植野広生