松尾貴史のカレードスコープ
具材とスパイスの相乗効果に鳥肌が立ったカレー|松尾貴史のカレードスコープ(55)

具材とスパイスの相乗効果に鳥肌が立ったカレー|松尾貴史のカレードスコープ(55)

仕事のため大阪・北新地に訪れた松尾貴史さん。時間に余裕があったのでホテルの近くの人気店を訪れることに。そこで味わった鳥肌が立つほどおいしいカレーとは――。

いい感じで「整う」味わい

仕事の前日に大阪に入り、北新地のANAクラウンホテルに宿泊した。現場入りが午後なので、近くで早めにランチをいただこうと考えた。最寄りのカレー店を探してみると、何と100メートル余りの至近距離に人気店があるという。これは押さえておかなければと向かったが、時間を30分勘違いして、開店の25分も前に着いてしまった。
11時30分開店で、11時5分に到着したら、すでに先客が2人いて、3人目に並ぶ。程なくして私の後ろにもひとり、またひとりと続く。店内は6席のカウンターと壁際の2人席で、開店時には8人が並んでいて、そして全員が男性だった。つまり、開店と同時に、男ばかりで満席となった。

入り口

店に入ってその理由がわかったような気がした。ほとんどが常連客の様子で、お店の方はひとりで切り盛りされているのだが、それが颯爽とした美人女性だったのだ。
先の2人に続いて、「3人目の方は?」と注文を聞いてくれた。今日の日替わりが赤海老のキーマカレーだとのことで、開店以来の定番だというほろほろチキンカレーとのあいがけ(100円増し)をいただくことにした。これで1,000円、せっかくなので大盛り(100円増し)にして、合計1,100円。
北新地で、この値段はなかなかに良心的だ。すぐ近くのレストラン喫茶なら、エビカレーは1,500円だ。もちろん内容は違うだろうけれども、ありがたい設定ではないか。

メニュー

海老の殻の香ばしさを強く感じる風味と、海老の濃厚な旨みの出汁が、スパイスとの相乗効果で、一口目に鳥肌が立った。
おお、相乗効果!店名の「シナジー」(相乗作用)は、そういう意味でつけられたのか、と勝手に納得。その確認は、大変に忙しくされている店主に聞く間合いも掴めずじまいだが。
ほろほろチキンカレーは骨付き手羽元の肉がするりと解けてなるほどほろほろだ。下ごしらえで少し甘みを感じるように味付けしてあるのだろうか、グレイビーとは別の層の味わいを感じ、これもまたシナジーだ。

チキンカレー

チキンのグレイビーにだけ、カウンター上のカイエンヌペッパーを足してみたら、さらにパンチが効いて、これは癖になりそうだ。
満足していると、小さな容器でヨーグルトに品のいい甘さの蜂蜜がかけられたデザートが供された。いい感じで「整った」気がする。何ともいい按配で外に出たら、女性客が4人並んでいた。
美人目当てに男ばかり、というのは私の下衆の勘ぐりで、ただの偶然だった模様。大変失礼いたしました。

看板

店舗情報店舗情報

シナジー
  • 【住所】大阪府大阪市北区堂島1丁目5‐35 堂島レジャービル 2F
  • 【電話番号】非公開
  • 【営業時間】11:30~14:00 (無くなり次第終了)
  • 【定休日】土曜 日曜 祝日
  • 【アクセス】JR「北新地駅」より3分

文・撮影:松尾貴史

松尾 貴史

松尾 貴史 (俳優、タレント、ナレーター、コラムニスト)

1960年5月11日生まれ。神戸市出身。大阪芸術大学デザイン学科卒業。 俳優、タレント、コラムニスト、“折り顔”作家など幅広く活躍。下北沢のカレー店「般゜若」(パンニャ)店主。著書に『人は違和感が9割』、『違和感ワンダーランド』、『ニッポンの違和感』(毎日新聞出版社)等がある。