dancyu1月号「いま、東京で行きたいのはこんな店です。」特集に掲載した“編集部員の校了めし”。誌面では、長時間の作業に追われる雑誌づくりの校了期間中に、どうしても食べたくなるご飯を6人の編集部員が紹介しました。dancyuWEBでは、それぞれのお店について詳しくご紹介します!
作業の手が離れる時間が見えない校了時期に、「あれが食べられる時間までには仕事を片付けよう!」と奮い立たせてくれる、深夜のオアシス酒場――。「串焼きや しゃんしゃん」のことを、本誌記事ではそう紹介した。校了時期以外にも、夜遅い時間に駆け込むことが多いのだけれど、いやいや、早めの時間からじっくり腰を据えて飲むのにも最高なのだ。この店は。
西荻窪駅北口を出て、バス通りをしばらく歩いて、細い路地を覗くと「串焼きや しゃんしゃん」はある。平日は17時から、土日は16時から店を開く。ちなみに、徒歩10秒のところに16時から開店する銭湯があるので、ひとっ風呂浴びてととのえてからの、湯気を立てたまま生ビールをゴクリ!という至福のコースも可能なのだ。
口開けに訪れれば、美しく串打ちされた素材が冷蔵ケースにびっしりと並べられている。その光景に、「この店、間違いない」と、思わずニヤけてしまうことだろう。
僕が必ず最初に注文するのは、生ビールと“ミノもやし”。ピリ辛のたれを纏ったミノは、噛むほどに旨味がじんわり滲んできて、否応なしにビールが進む。喉が潤い、一息ついたところで、目の前の冷蔵ケースとにらめっこして、何から焼いてもらおうか、じっくりと悩むのだ。
悩みに悩んで、この日は豚バラ、花咲なんこつ、赤鶏上もも、ほうれん草チーズ巻の4本を注文。福岡出身の店主・東耕一郎さんが炭火で丁寧に仕上げる串焼きは、ねぎが玉ねぎの博多流。
串焼きに合わせるのは、芋焼酎ソーダ割り。棚に並ぶ本格焼酎は、店主と同じく酒好きの妻・智子さんがセレクト。銘柄はいつもお任せで出してもらうのだが、地元にしか出回らないような限定酒もあったりして、注文するたびに唸らせられる。
串焼きをさらに追加するのもいいのだが、料理メニューが素晴らしく充実しているのが、また悩ましいところ。皮目をカリカリに焼き上げた“焼豚足”は、フレンチからインスパイアを受けた逸品。さらには、ラーメンからそぼろめし、カレーライスなど締めの料理も多数ある。“辛麺”は宮崎の地元料理を、蕎麦粉の麺にアレンジしていて、これまた旨い。
惜しみなく手をかけた料理と、旨い酒、店主夫妻を中心とした朗らかな接客に、すっかり居心地がよくなって。ついつい長っ尻になってしまう。地元の人にこよなく愛される、実に西荻らしい店なのだ。
年末年始は2022年12月31日、2023年1月1日のみ休業。
写真:土居麻紀子 文:宮内 健