食べることが大好きなメンバーを集め、2019年より始動したdancyuの会員組織「dancyu食いしん坊倶楽部」。「人生最高の冬の美味しい食旅」をテーマにアンケートを実施し、その回答で圧倒的な支持を集めた「越前がに」を求めて冬の福井県へ。福井のソウルフード「ソースカツ丼」も味わいます。美味を堪能する旅のおとも「賢者の食卓 ダブルサポート」を携えて、いざ出発!
登録メンバー数、およそ1万8,000人(2022年11月時点)の「dancyu食いしん坊倶楽部」。おいしいものへの感度が高いメンバーに「人生最高の冬の美味しい食旅」についてアンケートを実施した。
食べた料理についての回答で、約25%という圧倒的な数字を見せたのが蟹。石川県の「加能がに」、島根県や鳥取県の「松葉がに」、兵庫県の「香住がに」、そして福井県の「越前がに」。
ことに、国内で早くから土地の名前を蟹に付けた「越前がに」は圧倒的な知名度を誇り、複数の回答者からその思い出が寄せられた(食いしん坊倶楽部アンケートより。一部抜粋)。
“美味しい食旅”の目的地に迷いなし。さっそく蟹の待つ福井を目指した。
福井駅を降り立ち、駅前の「恐竜広場」に設置される恐竜たちに目を奪われつつも、心は間もなく出会える越前がにに浮足立っている。
まず目指したのは、1962年創業の「寿し吉田」である。作家・司馬遼太郎氏が著した『街道をゆく (18) 〈越前の諸道〉』でも紹介された、地元を代表する鮨店だ。
特筆すべきは、現在店を守る3代目・田畑健太郎さんは、鮨職人でありながらも、蟹専門の卸も手掛けているということ。初代の祖父が蟹に力を入れていたことから、代々、鮨と同様に蟹も積極的に提供してきた。店内には大きないけすがあり、立派な越前がにを生かしている。たとえ時化(しけ)が続いたとしても、「寿し吉田」でなら、冬の味覚・越前がにを堪能できる安心感がある。
今夜は、こちらで蟹と鮨を味わい、明朝は越前町漁業協同組合へ向かってせり見学をする旅程である。
ほどなくして、ゆで立ての越前がにが運ばれてきた。重さ1.1kgという想像以上に立派な大きさと、その迫力に思わず感嘆のため息が出る。
ゆで立てを出せるのも、いけすのある「寿し吉田」ならではのことだ。
健太郎さんは、毎日のように自ら市場に足を運んでは目利きをし、蟹をゆでて捌く。蟹漁が解禁されるシーズン中に捌く蟹の数は、なんと約3万匹にも上るという。
「蟹がおいしくなるのは、1kgを超えてからじゃないでしょうか。祖父が蟹を大事な食材として扱っていたことから、僕自身も小学校の頃から毎年蟹を食べ続けています。年ごとに味わいが変わりますし、育った環境によっても一匹ずつ違いがあります。それを見極めて、最適な処理方法とゆで方で提供しています。越前がにをゆでていると、栗のような香りが立ち上ります。卸の仕事でいろんな地方の蟹も扱ってきましたが、越前がには身や味噌の味わいが濃厚なんです」
しっとりとした食べごたえのある身と濃厚な味噌!それを口いっぱいに頬張る。まさに「贅沢」の二文字が頭に浮かぶ。
続いて、メスのせいこがにのグラタンもお願いした。
とろりとクリーミーなソースとほぐした蟹の身がたっぷり入り、豊かなコクが広がる。香ばしく焼けた甲羅からよい香りが漂い、口中に濃厚な旨味が広がるとともに幸福感に包まれる。
さらに、北陸の旬を味わえる握り鮨も堪能しよう。
健太郎さんはこう解説する。
「日本海は流れが速いので、ブリやカンパチといった魚体の大きなものがとくにおいしくなりますね。寒くなるほどに脂をたくわえるので、サバや甘海老、イカなどは、この時季はさらにおいしさが増します」
翌朝、越前がにが水揚げされる越前町漁業協同組合の市場へと向かった。どんな風にせりが行われているのかを見学するためだ。
海沿いに延びる道沿いには、街灯のモチーフや立ち並ぶ旅館の看板、飲食店ののぼりにも蟹がデザインされ、まさに「蟹の本場」である。蟹漁が解禁されるこの時季は全国から観光客が訪れ、街は賑わいを見せる。
越前町漁業協同組合には、大型底曳船4隻、小型底曳船41隻が在籍していて、この時季はどの船も蟹漁に精を出す。
夜中0時に港を出た船は、約30時間後の朝6時頃に入港して水揚げをする。そして、せりは9時頃から行われる。
活気を増す市場にて、越前町漁業協同組合参事の南直樹さんにズワイガニ漁の歴史が国内で最も古いといわれる越前がにの特長を聞いた。
「蟹にタグを付けてブランド化したのは、実は越前町が発祥といわれています。外国産や北海道産の蟹と違うものだと一目でわかるように、1997年から取り付けるようになったんです。越前がにの特長は、比較的1kgを越える大きなものが多いですね。1kgになるには15年かかります。それだけ蟹にとっての棲息場所が住みやすい環境ということなのでしょう」
水揚げされたばかりの蟹は、1匹ずつ並べられる。
「福井県内でも、この並べ方をするのは越前町のセリだけです。他では箱詰めが基本です。これは昔からの方法で、蟹のお腹を見ることでよりよく吟味ができ、一目で良し悪しが判断できるからです」
昨晩の「蟹一匹ずつに違いがあり、ストーリーがある」という、「寿し吉田」の健太郎さんの言葉が思い出される。そして、あの感動を呼ぶおいしさがよみがえった。
帰路に就く前に、ぜひとも食べておきたいものがある。ウスターソースをご飯にかける料理を日本で初めて提供した「ヨーロッパ軒総本店」のソースカツ丼である。
創業者・高畠増太郎さんはドイツ・ベルリンで6年にわたって料理を学び、1913年に東京・早稲田に自身の店を開店。関東大震災のため、1924年に故郷・福井へ店を移した。
以来、福井ではソースカツ丼がローカルなソウルフードとして愛されている。10年修業をした料理人のみがのれん分けを許されており、現在は19店の「ヨーロッパ軒」がある。
レトロな雰囲気の店内に入り、さっそく「カツ丼セット」をお願いする。
運ばれてきて、そのボリュームに圧倒された。蓋が閉まりきらないほどなのだ。
蓋を開けると、油とソースが融合した香ばしくも芳醇な食欲をそそる香りが広がった。
肉は国産の上物を選び、厚さは約8mmでカット。衣のパン粉は極細にひいてあるため、ラード100%の油をあまり吸わずに思いのほかあっさりと食べられる。
それでいて、肉はジューシー。つやつやの福井県産米のご飯の甘味とウスターソースの甘酸っぱさが絶妙に合う!
そして、ここで4代目・高畠輝成さんから衝撃の事実を知らされる。
「ソースカツ丼は、決してカツをメインとした料理ではなく、ウスターソースを日本人に味わってもらうための料理として誕生しました。卵かけご飯のように、ウスターソースをご飯に合わせて食べてほしい。そのために、ドイツのシュニッツェルという揚げ物をイメージしてご飯にのせたのです。現在は、ウスターソースの特製のベースをつくってもらい、店ごとに甘味、酸味を調整して仕上げています」
丼には、ウスターソース、ご飯、カツ以外は何ものらないという潔さ。
「シンプルな分、一つ一つにこだわっています。カツは厚いもの一枚にするのではなく、ご飯と一緒にかぶりついたときのベストバランスを求めて8mmにたどりつきました。ご飯は4種類の米をブレンドして、しっかり浸漬して、ウスターソースがよく絡むようガスでパラリと炊きあげます。福井は水がおいしいのでご飯もおいしく炊けますよ。多い日は、1日50kgものご飯を炊くこともあります」
聞けば、週に1度はスタッフ全員がまかないでソースカツ丼を食べるという。
「自分たちがどんなものをお客様に提供しているのかを再確認するためです。あとは単純に、スタッフみんなが食べたいからですね(笑)」
福井の美味の秘訣は、提供する料理人自身が持つ食材や料理への愛着と誇りにあると感じられた。
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文:沼由美子 写真:森本真哉