横浜駅の近くには、天国に一番近いネパール酒場があった──街によくあるインド・ネパール料理店=インネパ食堂を巡って、スパイシーな料理をつまみに酒を飲み歩く連載企画。第14回目は、開放感あふれる屋上で、そして現地感が色濃く漂う店内で、ネパール飲みをとことん満喫していきます!
近年、巷でよく見られるインド・ネパール料理店(※)やネパール料理専門店。そういったお店を酒場として楽しむ“インネパ飲み”が、酒好きの間でじわじわと注目を集めています。この連載ではインネパ飲みを実際に体験しながら、その魅力をお伝えしていきます。
※ネパール人が経営するインド料理店。通称「インネパ店」。街によくあるカジュアルな雰囲気のインド料理店の多くはネパール人が手掛けていて、それを示すようにネパール国旗が掲げられていたり、“モモ”などのネパール料理がメニューにあったりします。
案内役は、北は北海道・稚内から南は沖縄・宮古島まで、全国各地のインネパ食堂を食べ歩いた著書『日本のインド・ネパール料理店』が好評の、アジアハンター小林真樹さん。飲みのお供は、「東京ダルバートMAP」を編纂するカレー偏愛ライターの田嶋と、編集Mが務めます。
訪れたのは、前回に引き続き「ルーフトップ ビアガーデン ヨコハマ」。横浜駅からほど近い便利な立地にありながら、この沸き立つ現地感はどこからくるのか。小林さんの旅の思い出話とディープなネパール料理を肴に、今回もたんまり飲んできました。
雑居ビルの屋上にこつ然と現れる、ネパール式ビアガーデン。他にはない絶好のロケーションで、一同はまだまだ飲み進めていきます。
ここで選んだつまみは、にんじんやきゅうりなど数種の野菜を、スパイスとオイルで漬け込んだ“ミックスアチャール”。しっかり漬かっていて味が濃く、そこにグリーンピースのホクホクさが良いアクセントになっています。
まるで、そんな小林さんの記憶から飛び出してきかのように、ここで料理がもう一品到着。大きくカットした豚バラ肉と、玉ねぎ・ピーマンなどの野菜を甘酸っぱく炒めた“ポークチリ”で、どこか中華料理をも思わせる味わい。肉に脂が乗り切っていて、背徳感をともなううまさです。
そんな話をしていると、ポツポツ雨が降ってきました。そこで一同は、階段を降りて4階へ。こちらでも屋上と同じメニューをオーダーできます。そして屋内に移動して思わず目を惹いたのが、屋上とはまた違うテイストの異国情緒でした。
そんな話題に合わせるようにして到着したのが、料理の方でもある種、異国情緒あふれる一品。肉はチキンとマトンのミックスで、そこに野菜や卵などがのった、具だくさんの“ミックスチャーハン”です。スパイスの風味もほどよく感じます。
たたみかけるようにして、今度は豆粉を使ったネパールのお焼き“バラ”(ウォーとも呼ばれる)が到着。豆の素朴なうまみを活かしたシンプルな味わいで、ネパール山椒=ティムルの効いたトマトアチャールといいコンビです。
屋上にいても、屋内にいても、ネパール現地の雰囲気を色濃く味わえる稀有な店「ルーフトップ ビアガーデン ヨコハマ」。屋上にネパールの赤い三角旗を見つけたときは、何はともあれ階上に昇ってみるのがよさそうです!
インド・ネパールの食器や調理器具を輸入販売する有限会社アジアハンター代表。インド亜大陸の食に関する執筆活動も手掛け、著書に『日本のインド・ネパール料理店』(阿佐ヶ谷書院)、『食べ歩くインド』(旅行人)などがある。http://www.asiahunter.com/
文:田嶋章博 写真:小林真樹、田嶋章博、編集部