料理とヱビスを愉しむ時間をテーマに、西は広島、北は新潟へ。2軒の日本料理店「田心」と「蕎麦佳肴 五常」を訪ね、瀬戸内と日本海の魚介と絶品ヱビスを堪能しよう。
夏に旬を迎える瀬戸内の魚介は数々ある。
鯛、ハモ、オコゼ、キジハタ、メバル、イサキ、アサリ。
魚介をはじめ、多種の野菜においても地物の良質なものを選んで提供しているのが、広島の日本料理「田心(でんしん)」だ。
さらにこちらは、高品質なヱビスブランド樽生を提供する「絶品ヱビスの店」認定店でもある。クリーミーな泡、クリアなビール、コールドな温度を実現したヱビスが味わえることはお墨付き。いやが上にも期待は高まる。
店主の田中晋一朗さんが「いいものをシンプルに。つくれるものは自分でつくります」と話す通り、自家畑では玉ねぎやなす、れんこんなど年間20種類に及ぶ野菜をはじめ、完全無農薬で米を育て、さらには完熟・無農薬の梅を使った梅干しや味噌を手づくりしている。
「調味料も添加物のないものを選んでいます。もしかしたら、お客様には伝わらないことかもしれませんが、いいものを求めていった結果です。料理をつくる上でも、技だけでなく、扱う素材や調味料の原料といったところからこだわりたいと思っています」
丁寧な仕事を施された“八寸”が運ばれてきた。そして、乾杯のヱビスビールも。とりどりの美味を詰め込んだ八寸に負けないくらい、黄金色のビールもクリーミーな泡も美しい。
さっそく喉を潤す。深い旨味とコク、喉をすーっと滑るクリアな飲み心地。くぅ、たまらん!
さらに、ヱビスビールに合うものを、とリクエストすると“おこぜ唐揚げ”が登場。
「夏に旬を迎える魚ですね。どう料理してもおいしい魚ですが、揚げるとすごくオコゼのよさが出ると思うんです」
頬張ると、プリプリの身はもっちり。味つけは塩だけなのに、旨味もさらに凝縮されているよう。きれいな味わいなのに旨味は強く、コクの深いヱビスと相思相愛のおいしさである。
続いて登場した“石本農場だし巻き玉子”は、極力、ストレスのない環境で育てた鶏の卵を使用。鰹節と昆布の一番だしをたっぷりと含ませ、注文が入ってから焼き上げる。
そのふるふるとした弾力は、箸で持ったそばから伝わってくる。
訊けば、「うちはなぜかお客様に『この店のビールが広島一おいしい!』とよく言われるんです」と田中さん。
「普通のことをやっているだけなんですけどね」
田中さんの言う普通のこと、というのは、生ビールの注文数がどんなに少ない日でも毎日のサーバーの清掃は欠かさない、グラスを手洗いするといったことを指す。
「でも確かに、仕事終わりの一杯を飲んだとき、自分でも『旨いなぁ』って思います(笑)」
「田心」では、揚げ物もだし巻き玉子もつくりたて。「一番おいしい提供の仕方とは」を追求して、ここにたどり着いた。先の調味料の選び方にしてもしかり。
だから、おいしいヱビスに出逢えるのもまた必然なのである。
次に、日本海の海の幸を求めて向かうは新潟だ。新潟駅から、徒歩9分。26歳で自身の店を構えた金子真太郎さんが営む「蕎麦佳肴 五常(そばかこう ごじょう)」を訪ねた。
こちらでは、約10皿におよぶ日本料理とその〆に透明感のある十割手打ち蕎麦をコースで提供。日本海の魚介を中心に、旬の地場野菜なども織り込まれ、新潟の美味を堪能できる。
このスタイルに落ち着いたのは、自身が日本料理を学んできたこと、そして実家が25年にわたって石臼を使った粗挽き粉で打つ手打ち蕎麦専門店を営んでおり、その蕎麦の提供を合わせたことによる。
金子さんは言う。
「開店したばかりの頃は、もっと手軽な料理をアラカルトでも提供していました。こんなものを食べたい、というお客様の要望に応えるうちに、料理もしっかり味わっていただけるようコースのスタイルに。まさに、お客様に育ててもらってます」
そして、特筆すべきは、絶品ヱビスの店である「五常」で提供しているビールが“ヱビス マイスター”であることだ。
“ヱビス マイスター”は、ビールの本場ドイツで学んだブリューマスター2名と50名以上もの技術者が結集して造り上げたもの。薫り高いロイヤルリーフホップを一部使用し、「ヱビスの最高峰を目指した」ビールなのだ。
さっそく“ヱビス マイスター”で乾杯をしよう。
麦芽の香りが立ち、深いコクが広がる。しっかりした飲みごたえで、贅沢な気分に満たされてしまう。
料理もいただこう。
この日のお造りは、佐渡沖で揚がった本鮪と日本海の甘鯛だ。
薄く引いた甘鯛は、県内の笹川流れという地でつくられた藻塩で軽くもんで旨味を引き出している。そのひと手間が、はっと目を見開くようなおいしさに繋がっている。
甘鯛はウロコをパリパリに焼き上げた松笠焼きにし、自家製からすみのすりおろしをふりかけていただく。
金子さんは、日本海で揚がる魚の特徴をこんなふうに語る。
「海流が激しいので全体的に身の締まった魚が多いですね。お客様の好き好きはありますが、脂のりのよさというよりは、旨味や食感にその魚のよさが出るように思います」
金子さんは“ヱビス マイスター”を選んだ理由をこう語る。
「いろいろ飲み比べて、自分が一番しっくりくるビールを選びました。皆さん一杯目によく注文されます。食事に合わせて日本酒やワインを愉しむお客様も多いので、たとえ一杯だとしてもしっかりした造りで味があるものを提供したいと思ったのです。少々値段が高くても、厚みがあって、いつどんなときに飲んでも飲みごたえを感じます」
〆の手打ち蕎麦が登場して驚いた。
十割だというのに、しなやかな極細で、透き通るほどに至極繊細。それでいて、蕎麦の香りは高く、しっかりとした食感がある。
金子さんはこう付け加えた。
「コロナ禍で、皆さん外食する頻度が激減してしまいました。お客様もおっしゃるんです。その分、外食では家では体験できないようなものを食べたいし飲みたい、と。“ヱビス マイスター”はその点でもぴったりです。初めの一杯を召し上がって、やっぱり、店で飲むビールはおいしいね、と喜んでいただけます」
田心
【住所】広島県広島市中区中町1‐17 フクモトビル1F
【電話番号】082‐236‐7117
【営業時間】11:30~13:30(L.O. 昼は火・水・木曜のみ) 18:00~21:30(L.O.)
【定休日】日曜 祝日
【アクセス】路面電車「八丁堀駅」「袋町駅」より6分
蕎麦佳肴 五常
【住所】新潟県新潟市中央区天神1‐18‐15
【電話番号】025‐245‐0805
【営業時間】11:30~13:30(L.O.) 17:30~20:00(最終入店) 日祝は~19:00 夜は完全予約制
【定休日】不定休
【アクセス】JR・私鉄「新潟駅」より9分
※お店のデータは通常営業時のものです。時節柄、酒類の提供や営業日時が変更されている場合があります。お出かけ前にご確認ください。
ストップ!20歳未満飲酒・飲酒運転。
文:長谷川ミヤ 写真:山出高士