横浜駅から程近い場所に、“天国に一番近い”ネパール酒場があった──街によくあるインド・ネパール料理店=インネパ食堂を巡って、スパイシーな料理をつまみに酒を飲み歩く連載企画。第13回目は、他にはない屋上ビアガーデン式のネパール料理店で、夏を楽しみます!
近年、巷でよく見られるインド・ネパール料理店(※)やネパール料理専門店。そういったお店を酒場として楽しむ“インネパ飲み”が、酒好きの間でじわじわと注目を集めています。この連載ではインネパ飲みを実際に体験しながら、その魅力をお伝えしていきます。
※ネパール人が経営するインド料理店。通称「インネパ店」。街によくあるカジュアルな雰囲気のインド料理店の多くはネパール人が手掛けていて、それを示すようにネパール国旗が掲げられていたり、“モモ”などのネパール料理がメニューにあったりします。
案内役は、北は北海道・稚内から南は沖縄・宮古島まで、全国各地のインネパ食堂を食べ歩いた著書『日本のインド・ネパール料理店』が好評の、アジアハンター小林真樹さん。飲みのお供は、「東京ダルバートMAP」を編纂するカレー偏愛ライターの田嶋と、編集Mが務めます。
今回のお店は、「ルーフトップ ビアガーデン ヨコハマ」。その“奇跡のロケーション”でいただく酒とネパール料理は、果たしてどんな味わいなのか?
今回は小林さんが、他にはないとっておきのインネパ食堂に連れて行ってくれるとのことで、一同は昼下がりの横浜に集合。なんでも、とても「夏」なロケーションの店とのこと。
横浜駅から徒歩8分ほど歩いたところに、年季の入った雑居ビルがぽつねんと建っている。こんなところにとっておきの店が本当にあるの?なんて思いながら空を見上げれば……ビルの屋上にはためくのはネパール国旗! なるほど、目指すはあそこだ!
息を切らして狭い階段を4階まで昇り、さらに屋上へと出ると……ありました!その名も「ルーフトップ ビアガーデン ヨコハマ」。
3方向に横浜の町並みが見渡せて、心地よい風も抜ける最高のロケーションです。ビアガーデンですから、なにはともあれビールで乾杯!
そんな中、つまみの先鋒として登場したのが、“グンドゥルックサデコ”。無塩発酵させた青菜(グンドゥルック)を、スパイスなどでサデコ=和え物にしたもの。噛むほどに滋味あふれる酸味と旨味がしみ出て、そこにバトマス=大豆の心地よいカリカリ食感が加わります。
さらには、次鋒がまたなんとも魅惑の1品でした。その名は“ワイワイサデコ”。ワイワイというネパールで人気のインスタントヌードルを細かく砕いてスパイスで和えた珍品で、めんのサクサク感に、レモンの酸味とチリの辛味、そしてジャンクなスパイス感があいまって、恐ろしいほど酒に合います。添えられたグリーンチリを時おりかじることで、飲むペースにさらにターボがかかる!
ワイワイサデコを肴にわいわいと話が弾んだところで、今度は“ポークセクワ”が登場。肉の香ばしい香りと、心地よいクリスピー感。レモン汁をたらし、ネパール山椒=ティムルとチリをあわせたティムルコチョップをつけて食べると、肉のおいしさがブーストされます。
さらにテーブルには“チャタマリ”が運ばれてきました。チャタマリは、米粉の生地に、野菜・肉・卵などの具材を乗せたネパール式お好み焼き。食べごたえがあって腹がこなれつつ、やさしいスパイス感でほっとひと息つけます。
最高のロケーションのもと、日の高いうちから気持ちよくグラスを空けていく3人。後編では、さらに飲み食いしながら、小林さんが体験したネパール現地のビアガーデン事情についても語っていきます。お楽しみに!
インド・ネパールの食器や調理器具を輸入販売する有限会社アジアハンター代表。インド亜大陸の食に関する執筆活動も手掛け、著書に『日本のインド・ネパール料理店』(阿佐ヶ谷書院)、『食べ歩くインド』(旅行人)などがある。http://www.asiahunter.com/
文:田嶋章博 写真:小林真樹、田嶋章博、編集部