「インネパ食堂」で飲む!
インド meets タイ!?型破りなセットメニューの衝撃!──築地「ダイヤモンド」後編

インド meets タイ!?型破りなセットメニューの衝撃!──築地「ダイヤモンド」後編

こ、こんな飲み方があったか!街によくあるインド・ネパール料理店=インネパ食堂を巡って、スパイシーな料理をつまみに酒を飲み歩く連載企画。第10回目は、ついに“禁断のセット”をオーダー。

近年、巷でよく見られるインド・ネパール料理店(※)やネパール料理専門店。そういったお店を酒場として楽しむ“インネパ飲み”が、酒好きの間でじわじわと注目を集めています。この連載ではインネパ飲みを実際に体験しながら、その魅力をお伝えしていきます。

※ネパール人が経営するインド料理店。通称「インネパ店」。街によくあるカジュアルな雰囲気のインド料理店の多くはネパール人が手掛けていて、それを示すようにネパール国旗が掲げられていたり、“モモ”などのネパール料理がメニューにあったりします。

案内役は、北は北海道・稚内から南は沖縄・宮古島まで、全国各地のインネパ食堂を食べ歩いた著書『日本のインド・ネパール料理店』が好評の、アジアハンター小林真樹さん。飲みのお供は、「東京ダルバートMAP」を編纂するカレー偏愛ライターの田嶋と、編集Mが務めます。

前回に引き続き、築地「ザ・ロイヤルアジアンキッチン ダイヤモンド 聖路加ガーデン店」で、インネパ飲みの可能性を拡張していきます。

外観
ザ・ロイヤルアジアンキッチン ダイヤモンド 聖路加ガーデン店。

食の国境を越える、禁断のメニュー!?

インド・ネパール料理とタイ料理を肴に、タイビール、タイ産ウイスキー、ネパール産ラムのコーラ割りと、思い思いの酒をぐいぐい飲み進める3人。

続いてのつまみはタイ料理の定番、春雨サラダの“ヤムウンセン”です。甘酸っぱいソースで和えた春雨に、野菜や香草、そして大ぶりのイカ、エビ、アサリなどが乗り、食べごたえ十分。ベースの味わいは上品ですが、そこにプリックナンプラー(唐辛子を漬けたナンプラー)をはじめとするタイの卓上調味料でチューンナップすると、これまた酒が進みますわ。

ヤムウンセン
ヤムウンセン990円。

いいペースで飲み食いしつつも、われわれはある“禁断のメニュー”が気になっていました。

小林
せっかくこの店に来たので……アレ、いっちゃいませんか
田嶋
ですよね……うん、いっちゃいましょう!

そうして頼んだのが、「ダイヤモンド」の誇る豪華セット“日曜日スペシャルコース”。こちらは前菜、メイン、デザート、酒がセットになったものなのですが、なんといっても新鮮なのは、タイ料理メニューとインド料理メニューが、がっぷり四つに組み合っているところ。

さすがに調理には少し時間はかかりましたが、到着したセットを見て、おおお!と歓声が上がります。

日曜日スペシャルコース
日曜日スペシャルコース2,500円。2人分を目安とした品数となっている。

迫力に圧倒されてしまいそうな、そのセット内容は……。
・生春巻き(タイ)
・チキンティッカ(インド)
・トムヤムクンスープ(タイ)
・チキンビンディー(インド)※日替わりカレー
・マトンカレー(インド)
・パッタイ(タイ)
・チーズナン(インド)
・サラダ×2
・ドリンク×2
・デザート×2

まずは「タイサイド」から味わってみます。みんな大好き“生春巻き”に齧り付いたら、お次は“トムヤムクン”に取り掛かります。

編集M
この店のトムヤムクンは、レモングラスやタマリンドの酸味がしっかりありながらも、ココナッツミルクの甘さと風味でやさしくまろやかな味わいになってます。これはタイ産ウイスキー“メコン”に合いますね
田嶋
“パッタイ”は、もっちりとした平打ちの米麺に干しエビの風味と、さらに酸味と甘味が絡み合った絶妙な味わい。ここに卓上調味料で辛味をブーストすれば、絶好の酒肴となりますね

続いて「インドサイド」にも箸を伸ばします。

田嶋
オクラと鶏のカレー“チキンビンディー”は、鶏の旨味がしみ、これもウイスキーなど蒸留酒と好相性!“マトンカレー”もビシっと辛さが効いてます
編集M
そして、チーズのみっちり詰まった“チーズナン”!以前、この連載で訪れた清澄白河「サッカール」でも立証されましたが、われわれにとってチーズナンは、これ単体で十分な酒の肴です(笑)

写真には写っていませんが、ここにサラダ(インネパ店でお馴染みのオレンジのドレッシングがかかっている!)が2つと、ドリンクが2杯、そしてデザートが2品ついて2,500円ですから、かなりお得なセットといえるでしょう。

土曜日のスペシャルセット
土曜日のスペシャルセットは、ガパオライスやフィッシュカレーがメインとなる。
編集M
セットメニューといえど、一品一品が丁寧に作られていて、きちんとおいしかったです!
田嶋
タイ料理とインド料理がけんかしてしまうかとも思いましたが、ちゃんぽんして食べ進めても、不思議と違和感がありません。まさに呉越同舟ですね(笑)
小林
それぞれがハッキリわかりやすいおいしさで、かつ腹にたまるものもあり、妙な高揚感と背徳感がありますね(笑)
田嶋
2,500円のセットと聞き、最初は高いか安いかよくわかりませんでしたが、こうしてみんなでつまめることと、酒が2杯もつくことをふまえると、かなりお得な気がしてきました
小林
ちなみにインド好きの人は、タイ旅行も経験している人が多いんです。どちらも旅好きにとってはメジャーな場所ですし、日本からインドへ渡航する際に、まずはタイまで行き、そこからインド行きの航空券を買う方が安くなったりもするので、タイにも滞在経験のあるインド好きは多いんですよね。そういう意味でも、インド料理とタイ料理は親和性が高いなと

近年増える“勝ち組”インネパ店

元バックパッカーならではのエピソードを披露してくれた小林さんですが、ここでふと不思議な酒をオーダー。ラム酒をインドのヨーグルトドリンク=ラッシーで割った“ラムラッシー”です。

ネパールラムラッシー
食後酒代わりに注文したネパールラムラッシー500円。ベースをインドラムとネパールラムから選べる。

甘×甘による高純度の甘さがカルアミルクを彷彿とさせつつ、アルコール度数が高く、どこか“知らない場所”へ連れていってくれそうなパンチ力を秘めています。まさに、今日のセットメニューと同じように。

小林
ラムラッシーはインドでもあまり見ないので、日本発祥のドリンクメニューかもしれませんね
編集M
それにしても、インネパ店というと、街なかの比較的こじんまりした店舗をイメージしますが、こういったゴージャスな“大箱”もあるんですね
小林
実は近年、この店のように、テナント料の高い大規模オフィスビルや駅前の大型商業ビルに入るインネパ店が増えているんです。語弊はありますが、私は彼らを“勝ち組インネパ店”とも呼んでいます。この「ダイヤモンド」のグループも、コロナ禍にかかわらず規模を鋭意拡大していて、今や4店舗を展開。ここ築地以外にも汐留や大崎など、すべてが大型ビルに入っていて驚かされます
聖路加タワー
店内

大きなオフィスビルに入るインネパ店は、街なかの小規模インネパ店とはまた違う楽しみ方がありました。都心のオフィスビル街には気軽に飲める酒場が少ないので、その点でもインネパ酒場は、これからとても重宝しそうです。

さて次回は、いよいよネパール料理の最高峰の一つといわれる、あの店を訪問します。お楽しみに!

案内人

小林真樹さん

インド・ネパールの食器や調理器具を輸入販売する有限会社アジアハンター代表。インド亜大陸の食に関する執筆活動も手掛け、著書に『日本のインド・ネパール料理店』(阿佐ヶ谷書院)、『食べ歩くインド』(旅行人)などがある。http://www.asiahunter.com/

店舗情報店舗情報

ザ・ロイヤルアジアンキッチン ダイヤモンド 聖路加ガーデン店
  • 【住所】東京都中央区明石町8‐1 聖路加タワー 1F
  • 【電話番号】03‐6278‐8678
  • 【営業時間】11:00~16:00(L.O.) 17:00~22:00(L.O.)
  • 【定休日】無休
  • 【アクセス】東京メトロ「築地駅」より徒歩7分

文:田嶋章博 写真:田嶋章博、編集部

田嶋 章博

田嶋 章博 (ライター、編集者)

1976年、神奈川県生まれ。ファッション誌の編集を経て独立。ライフワークとしてカレーの食べ歩きと時々自作をしながら、WEBメディア、雑誌でカレー関連記事を執筆。 都内および近郊のダルバートを食べ歩いた「東京ダルバートMAP」を展開中。