漁獲量が非常に少なく、味が極めて良い為、水揚げ地の人々の胃袋に消え、一般入手困難なスマ。その完全養殖に愛媛県が成功!名付けて “媛スマ”。スズキ目サバ科スマ属スマ種のスマ。背側は中トロ、腹側は大トロ、スマのトロ体質は凄い!
「シマガツオが変じてスマガツオ」となったのが名の由来。熱帯・亜熱帯の海に生息し、大きいものは体長1m重さ10kgにもなる。日本近海では体長60㎝重さ3〜4kgのものが稀に水揚げされる。大きな群れを作らない為、専門の漁はなく、混獲されても、中央市場に送られることはない。理由は非常に美味な為、地元消費で消えるからだ。
熱帯・亜熱帯の海を好み、生態がよくわからないスマを、日本で完全養殖するのは容易なことではない。さらに、ビジネスとして軌道に乗せるには、数々の課題があった。
愛媛県・愛媛大学の高度な研究と養殖業者の熟練の現場力が密接に連携することで、次々と課題をクリアーし、2016年、非常に短期間で技術的には完全養殖に成功した。
その後も優良な血統選抜を遺伝子レベルで続けると共に、生産性向上と品質向上への取り組みが続いている。“媛スマ”は天然資源に負荷をかけない、持続可能な漁業だ。
厳冬期でも17度前後の海水温で、適度な潮流のあるリアス式海岸に、“媛スマ”の養殖場所がある。複数の生簀を使い、スマの成長に合わせて、分養を繰り返し、スマにとって心地よい環境を常に整えている。餌は成長に合わせて、大きさも種類を変える。
水揚げは一本釣り!間髪入れずに船上活〆、血抜きし、氷水で4度以下に冷やしこむ。陸揚げ後、流水で仕上げの血抜きと胃の洗浄を行い、高機能氷と共に箱詰めされる。水揚げから出荷まで、“媛スマ”は最高レベルの手当てがされる。
“媛スマ”の味は?と聞かれても、返答しにくい。カツオ・ハガツオがDNA的には近いが、食感も味も違う。脂がのった戻りカツオ以上に脂もある。高速で泳いでいる姿からは想像できない脂質含有量だが、その由来は餌のイワシ類などからだから、質が良いのだろう。スマは幻の美味魚・高級魚と呼ばれるが、スマはスマ!孤高の存在だ。
文:(株)食文化 萩原章史