銀座を訪れた松尾貴史さんは、ちょっと贅沢をしたい気分になり優雅にインド料理のコースを食べることに。単品だけ食べるいつものランチとは違い、さまざまな料理と味わいを楽しんだ感想はいかに――。
せっかく銀座に来たのだからと、少々贅沢なインド料理をいただきたく、5丁目のビルの3階にある「SEABIRD COLONY」へ。普段は慌ただしく単品のカレーばかり食べているので、たまにはインド料理をコースでいただくことに。
初訪問でも、内装の落ち着いた感じと、ニューヨークあたりのワインビストロを思わせる世界観に一瞬で馴染んでしまった。いや、私がニューヨークに馴染んでいるわけではないのだけれど、すこぶる落ち着く空間なのだ。シーフードコースを注文した。インドビールで喉を潤しつつ料理を待つことにしたが、最初の海鮮スープがクリーミーだったのですぐさまカリフォルニア産の赤ワインを開けることにした。給仕のお兄さん(聞けばネパールの方だった。日本語は達者)が、まだ店で働くようになって一週間、それもワインの抜栓は初めてというので、ビールとスープをいただきつつ、微笑ましく作業を拝見させてもらった。
海鮮スープは、クリームベースなのに微塵切りのパクチーがそれとなく混ざっていて、そこにほのかなスパイスが心地いい。次に出された真蛸のヴァルワル、皿に飾られている鮮やかな朱色の粉をパプリカかなと思って舐めてみれば実はカイエンヌペッパーで、いきなり目が覚める辛さ。蛸の下にあるペースト状がまた強い辛味で、コースの中ではこの時点が一番の辛さだった。北海道産ホタテのグリーンマサラは香りが個性的、ポハ・フライはライスフレークが衣で、クリスピーな食感と香ばしさを感じて嬉しい気分に。
ロブスターのタマリンダス・インディカは、酸味のあるインドの果実、タマリンドを使用して、ヒマラヤの岩塩とスパイスで爽やかに仕上がっている。余談だが、インドで生のタマリンドを齧らせてもらったことがある。その強烈な酸っぱさの代わりになるものは、日本では思いつかないほどだ。
マルバル・フィッシュカリーは、最後の海鮮ビリヤニとともに、ライタ(ヨーグルトの付け合わせ)を混ぜつつ。最後の満足感まで素晴らしく、コストパフォーマンスも優秀で、定期的に訪れたい店に出会えてありがたい限りだ。
文・撮影:松尾貴史