2018年12月に、当時22歳だった宍戸(ししど)涼太郎さんと土屋杏平さんが2人で開いた日本酒の店「SakeBase」。建物の賃貸契約終了に伴い、今年2月にいったん閉店し、近所に店舗を移すことになった。旧店舗最後の日、2月20日(日)の様子をレポートする。
日本酒への取り組みを稲作から始める、という型破りな酒販店「SakeBase」。20歳で日本酒の魅力に取りつかれ、「この道を一生の仕事にしよう」と大学も中退。単発の日本酒イベントなどで経験を積む中、クラウドファンディングで資金調達して3年前に構えたのが、西千葉駅から徒歩6分の7坪の店舗だった。
昨年5月頃、店舗の大家さんより「来年3月以降の契約更新はしない」との通達が。「次の店舗も大好きな西千葉で探したい」、そう考えて必死に探すこと2カ月あまり。西千葉という土地をあきらめる気持ちも出始めていた7月30日、ついに運命の物件との出会いがあった。
見つけた店舗はこれまでの店と同じ道沿いで、徒歩1分もかからない。56年続いた「あだちや」というお蕎麦屋さんで、店主の女性が高齢となり店をたたんだ。その息子さんが店内の片付けしているところにたまたま宍戸さんが通りかかり、声をかけたのだった。
後日きちんと交渉して、めでたくこの店舗を借りられることに。「やっと店舗を見つけることができ、数ヶ月ぶりに心からほっとしました」と宍戸さん。奇しくも出合いの日、7月30日は宍戸さんの25歳の誕生日であった。
営業最終日の2月20日は日曜日。酒販店としての営業は通常通り11時から行なっていたが、昼間しか来られないお客さんや知り合いがちらほら、花や手土産を持って訪ねて来る。「2週間後には新店舗オープンするんですが、なんだか“やめるやめる詐欺”のようで……(笑)」と贈り物に戸惑いをみせる宍戸さん。
角打ち営業が始まる17時になると、待ちかねたように次々とお客さんが来訪。角打ちでは、SakeBaseがボトル販売している酒だけでなく、各地で見つけてきた日本酒もショットで提供しているが、それは「出会ったお酒を、日記のようにお客さんに伝えたい。毎週その都度“楽しく、生きている内容”で、お客さんにライブ感を満喫していただきたい」(宍戸さん)との考えから。
この最終日は常連さんが全員大集合という様相で、「ここに来るといつも新しい銘柄に出会える、勉強になる」と『酒米ハンドブック』片手に飲むお客さんや、SakeBaseの店舗以前のイベント時に出していたチケットを大切にホルダーに携えているお客さんも。
21時、いよいよ閉店の時が来た。初代メンバーである宍戸さんと土屋さんが代表して挨拶。常に店番を担当している土屋さんはサバサバしているが、宍戸さんはなんとも寂しそう。
「閉店です」の声がかかると名残惜しげに、お客さんが次々店を出ていく。週に何度も通う常連さんも多いだけに、「明日から2週間、どう過ごしたらいいんだろう」と本気で戸惑う声も……。こうして旧店舗は幕を閉じた。
翌日からは息つく暇なく突貫で、旧店舗の片付けと引っ越し、新店舗の内装工事が待っていた。次回は、新店舗開店日の様子をお伝えする。
写真:山本尚明 文:里見美香(dancyu編集部)