2月20日(日)に、3年2ヶ月あまり続けた旧店舗を閉店。翌日からメンバー5人、全力ダッシュで片付けと新店舗への移転準備を進めてきたSakeBase。ついに3月4日(金)、新店舗開店の運びとなった。
開店日の14時半、SakeBaseの新店舗を訪ねると、入口の壁や窓はまだ“完成”とはとてもいえない状態。代表・宍戸涼太郎さんからの前日のメールでは、「いよいよです! が……、大ピンチでもあります。14時半までは工事が入っています」とのことだったので、覚悟の訪問ではあった。が、中に入ると白を基調とした明るい店内で、メンバーの土屋杏平さんと石井叡(あきら)さんが焼き鳥の準備に邁進していた。内装はすっかり整っていて、ひと安心だ。
面積は70㎡と旧店舗の2倍以上になったが、「あまり雰囲気を変えたくない」と店舗部分は45㎡に留め、残りは事務所や倉庫として使用。旧店舗から徒歩2分の場所にあった「ラボ」の冷蔵熟成庫もこの店舗内に移築し、お客さんは小窓からオーク樽の様を見ることができる。
旧店舗では店の外で石井さんが焼き鳥を焼き、通りがかりのお客さんにも根強いファンが...いたのだが、匂いの問題などもあり昨年6月くらいから自粛。寝かせておいた焼き鳥のタレを、今回の開店に合わせて復活させる(焼いた鶏肉を浸けることで味が深まる)ため、メンバーはこの2週間「毎晩、焼き鳥ばかり食べていましたよ」と笑う。
使う鶏は、徳島県県産の銘柄鶏で、ムネ、砂肝、モモ、皮の4種類を準備。塩は、九十九里の塩を丁寧にすり鉢ですって細かくしてから使う。炭は土佐の備長炭、串は抜けにくい角串を使用。この焼き鳥の復活を楽しみにしているファンも多かったのではないだろうか。
17時、開店に向けての準備にいよいよ緊張感がみなぎってきた。移転祝いの胡蝶蘭が届き、樽酒の準備も始まる。壁の飾りつけも、開店に間に合わせなくてはならない。店の外には、早くも様子を見に来た常連さんの姿が。店内ではレセプションで流す蔵元さんからのビデオメッセージの再生装置がうまく働かず、知恵を結集。見ているこちらもドキドキ、そしてワクワクしてくる。
18時半。いよいよ新店舗の開店だ。旧店舗の閉店から2週間弱、待ちかねたお客さんが開店時間めざして入店し、あっという間に25人ほどが集まった。どの顔も輝いていて、嬉しそう。
乾杯用に用意した鏡割りの酒は、福島県西白河郡・大木代吉本店の「自然郷 セブン」純米生原酒。近年「楽器正宗」で大人気の蔵元だが、歴史ある「自然郷」のブランドを知ってもらいたい、と敢えてこちらの銘柄を選び、特別に生酒での出荷をお願いした。
宍戸さんは開口一番「見ての通り、外壁とかは全然できてなくて、正面の窓のガラスも朝、割れちゃったりといろいろなトラブルに見舞われましたが、なんとか今日オープンにこぎつけました」と挨拶。「でも店の中に入ってしまえば、外の工事が終わってないことなど忘れて、皆さん楽しく飲んでもらえると思います」と笑いをとる。
続いて、「自然郷」大木雄太蔵元杜氏、栃木「せんきん」薄井一樹蔵元、奈良「風の森」山本長兵衛蔵元からの開店を祝すビデオメッセージが流された。
開店レセプションのメイン「鏡割り」は、お客さんの掛け声の中、店を預かる責任者・土屋さんが行なった。カウンターで鏡割りした4斗樽を3人がかりで店の入り口に移動させ、いよいよお客さんたちに順番に注がれて、待ちに待った乾杯だ。
本日の特別な「自然郷」は、軽快な中に純米らしい落ち着きがあり、ずっと飲み続けられそうな味わい。お客さんたちにも大好評だった。
「イベント時代も含め、足掛け5年やってきて、まだまだお客さんに日本酒のことを伝えきれていない部分があると思っています。今回の移転で“より伝えやすい空間”になったと思うので、ますます日本酒の良さを伝えていきたい」と宍戸さん。ここからまた、SakeBaseとお客さんとの新たな歴史が始まる。
写真:山本尚明 文:里見美香(dancyu編集部)