料理とヱビスを愉しむ時間をテーマに、福岡は博多へ。個人店が多く、料理人とお客の距離感が近いという博多なら、食事はカウンターがいい。ジャンルレスな洋食に専門店の串揚げ。目の前でつくられる料理ともてなしの温かさを満喫しよう。
福岡空港から地下鉄で、ものの5分で博多駅へたどり着いた。中心地、天神駅まででも約11分。博多は、国内でもことに空の玄関口に近い街である。
とある飲食店の店主からはこんな声が聞かれた。
「博多は空港が近くて大きなビルが建てられないことから、小体の個人店が多く、お客様は店の人間に付く傾向があります。その点、料理人や店員との距離感が近いカウンター席は、象徴的な設えかもしれません」
博多のカウンター席で、料理と最高のビールを愉しみたい。
そこで目指すは、「絶品ヱビスの店」である。「絶品ヱビスの店」とは、ひときわ、高品質なヱビスブランド樽生を提供しているお店のことで、クリーミーな泡、クリアなビール、コールドな温度を実現したヱビスが味わえる。
さっそく、カウンター席のみの料理店「Yorgo」(ヨルゴ)に向かった。
オーナーシェフの川瀬一馬さんは、こう語る。
「店を造るとき、“まっとうな仕事”“清廉潔白な仕事”が伝わる店にしたいと思っていました。どう表現したらいいのか考えたときに、全席カウンター席にすることを思いついたのです。お客様の目の前で料理をすること。それ以上に、ごまかしのきかないことはないんじゃないかと」
手がける料理は、ビストロやトラットリアといったカテゴリーを飛び越えた、「Yorgo」ならではの夜ごはん。「夜ごはん」だから略して「ヨルゴ」と命名した。
毎日書き換わるメニュー表にオーダーを迷うも、8~9割のお客が頼むという“牛ヒレ肉のレアカツ”をお願いした。
鮮やかな赤身肉はしっとり柔らかく、ウスターソースベースのソースでぐっと親しみやすい味わいに仕上げてある。
運ばれてきたヱビスは、まさに淀みないクリーミーな泡を頂にたたえている。カツを頬張り、ヱビスを飲む。幸福感が満ちてくる。
そこに、店長の岡部裕三さんが声をかけてくれた。
「泡ぎりをしっかりして、きめ細やかな泡になるようにしています。揚げ物の油をきってくれる酸味やキレがありつつ、懐かしい洋食のようなソースに寄り添う深みがあります」
続いて“〆鯖のホットサンド”が登場した。パンはこんがり香ばしく、中には身の厚いレアな〆鯖が、グレープフルーツとともにぎゅっと収まっている。
柚子胡椒の爽やかな辛味がアクセントとなり、ヱビスが爽やかに喉を通り抜けていく。
さらに、ヱビスのお代わりを後押しするひと皿が登場。“ウニとジャガイモ”は、細切りにしたシャキシャキのじゃがいもの炒めに、生クリームと新鮮なウニを和えたソースがかかる。
適度な塩気があり、コク豊かなヱビスと絶妙に合う。
川瀬さんは、ヱビスを選んだ理由をこう語る。
「開店当初は、お酒はビールとワインのみに絞っていたので、特にビールは存在感のあるものをお出ししたいと考えていました。ヱビスはプレミアムビールとして存在感が光っていましたし、お客様の安心感も得られます。コクとキレのバランスが秀逸で、揚げ物にもホットサンドにも万能です。『とりあえず』の一杯で納得できるヱビスが出てきたら、満足しない人はいないですよね」
博多駅から1分ほどの場所にある「串匠」は、博多市内で5店を展開する串揚げの専門店である。なかでも、ここ「博多駅筑紫口店」は新幹線乗り口からもすぐ近く、地元の買い物客や近隣オフィスの会社員のみならず、出張で訪れるビジネスマンの姿も多い。いわば旗艦店といえる存在である。
大きな特徴は、品書きに書かれた約30種の串揚げが月ごとにがらりと替わること。
契約農家が減農薬で育てた野菜や旬の魚介など、福岡や近県から取り寄せる九州の食材が中心だ。
揚げたてが、1本ずつ差し出される。
“グリーンアスパラの一本揚げ”は、サクサクとした軽い衣の中から瑞々しいアスパラが顔を出す。“ズワイガニの蟹爪 磯辺巻き”は、蟹爪にさらに身を足してたっぷり詰めたところに海苔を巻き、磯の風味をプラス。“牛カルビ ジャポネソース”は、醤油ベースのソースが衣にしみ、これまた異なる食感が愉しい。
すかさず、ヱビスで喉を潤す。ほのかな苦味、深いコク、キリッと締まる味わいが、軽やかな串揚げと相乗し、何本でも食べられそうである。
聞けば、メニューにオンリストされる30種を全種食べ、さらに折り返しの追加注文をするお客もいるという。
カウンターの内側に立つ店長の芦田謙二さんは言う。
「お客様のペースを拝見しながら、熱いうちに召し上がっていただけるよう揚げたてを提供します。口に入るときにちょうどいい加減を計算して、火の通り具合は七割で揚げることを心がけています」
ひとつひとつの要素を吟味し突き詰めているのも、1992年創業、今年30周年を迎える専門店ならでは。
衣は、メレンゲを加えることでサクッと軽い歯ざわりに。
パン粉は、ごく細かく挽き、油を吸わない工夫をして極めて軽やかに。
揚げ油は、コクの広がるラード100%。
そして、ビールはヱビスと決めている。
その理由を、毎月のメニューを考案する社長の野中一英さんはこう話す。
「最初は、日本で最も名の通ったプレミアムビールのトップブランドという点からヱビスを選びました。うちでは揚げ油や衣に負けないよう、食材は歯ごたえがあったり、はっきりとした旨味の感じられるものを選んでいます。また、ソースは濃いめで、メリハリのきいた味に仕上げています。そういった食材やソースをつけて食べたときに、『美味しい!』と感じられるしっかりした味があるのがヱビスなのです」
カウンター越しに繰り広げられる、料理の香りや音。キビキビとした料理人が放つライブ感。
そして温かいもてなしに触れ、博多がまた来たい街になった。
もちろん、再訪の乾杯は絶品ヱビスで、ね。
Yorgo
【住所】福岡県福岡市中央区大名1‐2‐15
【電話番号】092‐725‐8277
【営業時間】16:00‐22:30(L.O.)
【定休日】無休
【アクセス】地下鉄「赤坂駅」より9分
串匠 博多駅筑紫口店
【住所】福岡県福岡市博多区博多駅中央街5‐15
【電話番号】092‐483‐1556
【営業時間】11:00~14:00 17:00~21:00
【定休日】無休
【アクセス】JR・地下鉄「博多駅」より1分
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文:長谷川ミヤ 写真:山出高士