浅草でランチを食べるなら?路地という路地に飲食店が連なる街だけに、どの店にしようか悩ましいところです。そんな時こそ、浅草の食文化を知ることができる『神林先生の浅草案内(未完)』掲載の、多ジャンルを網羅した情報がきっとお役に立ちます。
好評発売中の『神林先生の浅草案内(未完)』は、都立浅草高等学校、国語教師だった神林桂一さんが、dancyuWEBで連載していた「観光客の知らない浅草~浅草高校・国語教師の浅草ランチ・ベスト100~」「観光客の知らない浅草~浅草高校・国語教師の飲み倒れ講座~神林先生の浅草ひとり飲み案内」をまとめた本です。
そのもとになっているのは、神林先生が職場の若い先生たちに、「チェーン店だけでなく、浅草にはいい個人店がたくさんあるよ」と伝えるべくつくっていた『ミニコミ』。
ランチ編は、「浅草ランチ・ベスト26/100」というタイトルのもと、3枚綴りに100店を選出した大作のなかから、本書では26店を紹介しています。
部門を、「麺類」(ラーメンもスパゲッティも蕎麦も含む)、「肉料理」「居酒屋ランチ」「喫茶・カフェ」「カレー」「土日祝のみ」「西洋料理・洋食」「中華・韓国」「食堂・甘味」「ご飯物・丼物」「和食」に分別。
さらにジャンル分けをし、人気焼鳥店の“中華そば”、とんかつ専門店の“ロースカツ定食”や“かつ丼定食”、喫茶店の“ビーフシチュー”セット、“オムマキ”、江戸前鮨店の握り、居酒屋の“30品目バランスランチ”、正統派フレンチのランチコース、韓国料理店の“半鶏湯”(半身でランチにぴったりの量)、ガレット専門店のシードル付きのランチコース……などなど多岐にわたるジャンルを紹介。単なる店紹介に終始せず、背景にある食文化のことや地元民でも知らないようなニッチな情報も織り込まれています。
神林先生は、本書でこんなことを書かれています。
愛車にまたがり、勤務時間前に浅草の隅々までランチを食べ歩きました。浅草エリアで、今までランチを食べた店の数は708軒。「観光客の知らない」ランチを中心にお届けします。
神林先生のお店選出の基準は独特。有名なグルメサイトをはじめ、一元的な情報に頼らす、自身の情報を蓄積していきます。
本書には、店名に添えて、以下のような神林先生独自の評価基準のマークが添えられています
[★] 2019年10月の消費税10%への増税時に値上げなし
[歴] 創業からの長い歴史、継いできた伝統がある
[味] 料理の味がよかったり、食材選びに心を砕いている
[人] 女将や大将など、お店の人が魅力的である
[雰] 店の佇まいや店内に、渋くて落ち着いた雰囲気がある
[独] 店の存在感やメニュー構成に独自性がある
[女] 女性に推薦したいポイントがある
[C] コストパフォーマンスに優れている
(※連載当時の基準となります)
そして、浅草の街のことをこんな風にも書いています。本書を片手に、浅草に繰り出していただけたら幸いです。
浅草という街、特に観音裏は、古い店と新しい店が混在していて、入りづらい店でも、一度打ち解けると受け入れてくれる居心地のよさがあります。老若男女、外国人も観光客もいて、まさに「人の森」。そして、いろいろな人を受け入れてくれる懐の深さがあります。
撮影:大沼ショージ、萬田康文(カワウソ)
1954年5月26日生まれ。東京都出身。教員生活43年。食べ歩き、飲み歩き歴46年。
都立一橋高校時代から食のランキング・ミニコミを刊行(おもに職場で配布)。下町エリアを中心に酒場、定食屋、バー、和・洋・中・エスニック料理店、その他と守備範囲は広範囲に及ぶ。なかでも“お母さん酒場"には並々ならぬ情熱を持つ。
食にまつわる書籍、雑誌、テレビ番組、ランキングサイトなど、リサーチにも余念がなく、自作のデータベースには行った店・約9200軒を含む1万5000軒の食の店や食の情報が整理されている。2020年8月24日逝去。