SakeBaseは西千葉の店舗で日本酒を販売する以外に、定期的に出店しているイベントがある。それが、大多喜町にある「大多喜ハーブガーデン」で行われる日曜日のマルシェ。緑に囲まれた空間で、ふだんの店舗とはまた異なったお客さんたちに日本酒を広めている。
「お店に来るお客さんを待つだけではなく、SakeBaseのほうから出かけていく売り方があってもいいんじゃないか」。そんな考えのもと、SakeBaseはときどきバンに日本酒を積んで、出張販売に出かけていく。そのひとつが、千葉県夷隅郡大多喜町にある「大多喜ハーブガーデン」だ。
園内には名称通りハーブがふんだんに植えられ、ハーブ料理を供するレストランも併設。生のハーブやドライハーブ、ハーブを使った調味料やオイル、入浴剤を販売する売店も充実した、ハーブの一大テーマパークだ。おまけに入園無料とあって、休日には近隣から、あるいは東京方面からも多くの人がやって来る。
日曜のイベントに出展しているのは、有機無農薬野菜を育てる農家や、米農家によるおむすび店、コーヒー店、天然酵母パンや手作り惣菜、スイーツの店などさまざま。「平日は都心でサラリーマン、休日はジャムも煮るいちご農家」というダブルワークの人もいる。天然石のアクセサリーショップやビーズ細工、陶芸作品の店もあって、見て回るだけで楽しい。この日は石垣島産の、手でちぎって食べるパイナップル“スナックパイン”がおいしかった。出店者も来園者も一体となって、休日のこの空間を存分に楽しんでいるように見える。
緊急事態宣言前の夏のある日曜日、SakeBaseがマルシェに販売用に持って行ったのは、栃木・せんきんの夏酒「かぶと虫」30本と、奈良・油長酒造の「風の森」12本(いずれも720ml)、そして千葉・馬場本店酒造の「最上本味醂」(600ml)と鳥取・千代むすび酒造の麹甘酒各6本(785g)。そしてグラス売りで、梅酒ソーダ500円と冷甘酒300円を提供。以前は日本酒もグラス売りもしていたが、コロナで休止している。10時にスタートして午後2時の時点で残り6本と、売れ行きは順調だ。
SakeBaseがこのマルシェに初めて出店したのは、2019年のはじめ。最初は時折の参加だったが、「今年の冬からは、月2回きっちり参加することにしました」と代表の宍戸(ししど)涼太郎さん。「このエリアには銘酒を揃えた酒屋さんがないので、僕たちの持っていくお酒を楽しみに待ち、喜んでくれる人がいることがわかったんです」。季節によって出す商品は違うが、「その時期に一番飲んでいただきたいお酒を、蔵のストーリーとともに、マルシェのお客さんにしっかりお伝えしていきたい」と、丁寧にコミュニケーションをとるよう心がけている。
午後2時過ぎ、SakeBaseのブースを訪ねた若い女性のお客さんが「この間買った日本酒、おいしかったです!」と声をかける。すでに本日の日本酒は完売。石井さんが「今日は完売してしまいましたが、また次回のマルシェに来ますんで、よろしくお願いします」と返す。不定期でマルシェに来ていた頃には言えなかった言葉だが、月2回といえど継続して出店することで、お客さんとの関係も継続していく。地道に、少しずつ、そうやって日本酒ファンを増やしていく。
写真:山本尚明 文:里見美香(dancyu編集部)