料理とヱビスを愉しむ時間をテーマに、東京・駒込「小松庵総本家駒込本店」と東京・三越前「京都鴨そば専門店 浹(あまね)」を訪ねました。香り高い蕎麦と渾身のつゆ、そして蕎麦屋ならではのつまみ。蕎麦と真摯に向き合う2店が考える、ヱビスビールとの相性とは?
蕎麦前を愉しみ、蕎麦をたぐる。蕎麦屋で飲むと、なんだか大人の階段を一つ上った気分になれる。そんなシチュエーションに見合うビールと言えば、華やかな香り、きめ細かいクリーミーな泡、深いコクがありながらキリッと締まりのある、ヱビスビールだ。
さっそく「絶品ヱビスの店」を目指そう。「絶品ヱビスの店」とは、おいしい料理とともに、ひと際、高品質なヱビスブランド樽生を提供しているお店のことで、クリーミーな泡、クリアなビール、コールドな温度を実現したヱビスビールが味わえる飲食店である。
江戸二大庭園のひとつに挙げられる六義園から程近く、「小松庵総本家駒込本店」は、大正11(1922)年創業、来年100年を迎える老舗である。大谷石を敷き詰めた階段を上った先には、現代的で軽やかな空間が広がっている。
品書きを開いて、まず目に飛び込んできたのは「数量限定 味くらべ」と書かれたセット。2種の蕎麦を産地と品種違いで味わえるという。
料理長の杉本拓さんがこう説明する。
「蕎麦のテロワールを表現するために、今年の夏から品書きに加えました。年間で扱う産地は30種ほど。自家製粉、挽きぐるみの蕎麦粉で十割の手打ちにしています。蕎麦は時季や産地、生産者、そして品種で大きく風味が変わる食べ物です。私どもがお出しする、混じり気のない蕎麦の風味を存分に味わっていただけるよう考案しました」
今日は、北海道南富良野町産の“キタワセ蕎麦”と、栃木県都賀町産の“花そば”が供された。
“花そば”は生産者が3人しかおらず、都内で提供しているのはここだけという希少なものだ。
杉本さんが説明を添えてくれる。
「提供中の花そばの品種もキタワセになりますが、そう名付けている特殊な蕎麦なのです。花が咲いているうちに実を収穫してしまう、という非常に珍しく収穫量が少ない栽培方法をとっています。その分青みが強く、栄養価も高くなり、フレッシュな味わいを愉しんでいただけます」
翡翠色のように緑がかっていて、その風味はなんとフレッシュで華やかなことか。それでいて、味わいも強い。対して、“キタワセ蕎麦”は色味が淡く、素朴で落ち着いた味わいの印象だ。十割だというのに、なめらかな喉ごしにも驚いてしまう。
そこに、美しいヱビスビールを飲んでみると、これが合う!深い旨味とふくよかさ、しっかりしたコクが広がり、濃厚なつゆにも、軽やかに揚がった天ぷらにもぴったり寄り添う。
杉本さんがこんな話をしてくれた。
「約30年前からヱビスビールを提供しています。私たちの社長がよく話すのですが、小松庵の創業時は、うどんやラーメンも出し、出前を中心としていました。今のように蕎麦だけに特化していったのが1990年頃です。技を極めること、素材と向き合うことといった職人としての心意気で専門化を極めています。それと同じ“職人魂”を、ヱビスビールにも感じると。ほんの少しでもおいしさの差をつけるために、どれだけの努力が必要か。なにかと合理性が求められる時代に、愚直なまでに取り組む職人の心意気にシンパシーを感じています」
同店では、一品料理も充実している。
茄子田楽やにしん棒煮といった蕎麦屋らしい定番のつまみのほか、和食店のような前菜や、かえしのソースを添えたステーキなどもある。そこには、「故きを残して、新しき蕎麦の世界を創っていく」という想いが表れている。
鴨蕎麦の専門店「浹(あまね)」は、看板料理の鴨そばにおいても一品料理においても、関西風のだしを基調としている。
「提供するお料理も、おだしが生きることを第一に考えて揃えています。お酒もしかりです」と、店主の米田佳旦さんは言う。
ビールは、ヱビスビール1択。選んだ理由もそこにある。
「うちのおだしは、真昆布と鰹節、鯖節、ほか数種の削り節を合わせて、ぐつぐつ沸騰させて煮だす濃厚なだしなんです。品があって深いコクもある、というおだしです。開店当初、私たちのだしに合うビールはどれかと各社を飲み比べしてみました。その中で、唯一、ヱビスビールだけが、うちのおだしとコラボしてくれたのです」
「できる限りの最善を尽くそう」というモットーのもと、ヱビスビールを最上の状態で提供できるようリサーチも重ねたという。スタッフとともに、銀座「ライオン 銀座五丁目店」や「YEBISU BAR」などの専門店に赴いて、バーテンダーに聞き込みもした。
そうして出来上がったのは、店独自の手書き・5枚つづりの自作“ヱビスビール マニュアル”。
開栓してから3日以内の鮮度のいいうちに提供することはもちろん、営業が終わったらホースをすぐさま水通しする、洗浄は専用スポンジで手洗いし、自然乾燥する、そして、グラスは冷蔵庫ではなく氷水で冷やしてから注ぐ、といった細かい独自ルールを決め、それを厳守している。
ここでひとつ、注記しておかなければいけないことがある。
これほど、最上のヱビスビールに心を砕いている同店舗では、コロナ禍においてはやむを得ない状況に限り、瓶ビールのみを提供する場合があるということだ。
「せっかくのヱビスビールの樽生をおいしい状態で提供できないなら、それは私たちの本意ではありません。そういった場合に限り、瓶のみで提供させていただくことも考えています」
これもまた、料理店の誠実な姿勢なのではないだろうか。
同店では、「ここのヱビスビール、旨いねー!」とお客に驚かれることもしばしばだと言う。日常的に、そんな感動の第一声が飛び交う日が戻ってくることを思いながら、余韻の長いだしの鴨そばとヱビスビールをしみじみ味わった。
小松庵総本家駒込本店
【住所】東京都豊島区駒込1-43-16 アルナス駒込六義園2F
【電話番号】03‐3944‐8385
【営業時間】11:00~22:00
【定休日】不定休
【アクセス】JR・地下鉄「駒込駅」より2分
京都鴨そば専門店 浹
【住所】東京都中央区日本橋小舟町4-10
【電話番号】03‐6206‐2853
【営業時間】11:00~14:30 17:30~22:00
【定休日】土曜、日曜、祝日
【アクセス】地下鉄「三越前駅」より5分
※お店のデータは通常営業時のものです。時節柄、酒類の提供や営業日時が変更されている場合があります。お出かけ前にご確認ください。
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文:長谷川ミヤ 写真:山出高士