散歩途中もカレー屋探索を欠かさない松尾貴史さん。今回は代々木公園付近で新しい店を発見しました。そこで出会った独自の工夫が光る魅惑のスパイス料理とは。
ある日曜日に、代々木公園あたりを散歩していて見つけた素敵なカフェ風のスパイス料理店は、オーナーだろうか、店長さんもスタッフの方たちも、応対がすこぶる快適だ。
ペットのワンちゃんと散歩がてらに訪れるお客さんも多い様子。
もちろん、料理も非常に快適だ。チキンカリーとポークカリーの2種盛りをお願いしたが、本格派とはこのことを言うのだろうというスパイスの妙が楽しめる。
インドのスパイスと日本独自の食材を巧みに合わせた創作料理で、「どうだ」という主張をすることなくすんなりと味わえるが、口にスプーンを運ぶ都度、いちいちに感心する美味さなのだ。
脇役に、赤と緑の辛味のきいた付け合わせが2種類添えられている。
赤いほうは、パプリカ、ニンジン、マンゴーなどを発酵させて3週間かけて作る酸っぱいアチャールで、そこに辛味が加わる。
緑色のものは、青唐辛子、マスタードシード、生姜などを発酵させたもので、どちらも調味料は塩しか使わないそうだ。
ライスはバスマティライスと、何と酒米ではお馴染みの山田錦をブレンドして、大盛りを食べても食後感が軽やかなのがありがたい。
オープンな店構えなので、風が強い日などは花びらが舞い込んだり、近くの公園でフットサルに興じる歓声が聴こえてきたり、店内にどこからともなく外界と繋がっている気配があって、季節感も豊かに感じられ、得をした気持ちになる。
犬を連れた客には、彼ら専用の枠のついた「席」を組み立ててくれたりと細部まで心配りをしていて、見ているとこちらまで感謝したくなる素敵な雰囲気に包まれている店であった。
文・写真:松尾貴史