酒の香りを評してフルーティーとはよく言うが、本物の果実の香りと錯覚するほどの香気を放つ日本酒が誕生した。その名も「果月(かげつ)」。一口飲めば、まるで果実のようなフレッシュ感に驚くばかり。そんな新感覚の日本酒をdancyu食いしん坊倶楽部のメンバーが体験。さらに、世界一のマルゲリータを味わえるピッツェリアで、ペアリングの楽しみを教えてもらった。
「これは本当に日本酒?」
今までにない新感覚の日本酒「果月」を体験するべく集まったdancyu食いしん坊倶楽部のメンバーは一口飲んで、そう驚きの声を上げた。誰もが「フルーツみたい!」と言葉にするほど、「果月」には果実のような香りと甘味があり、ほのかに爽やかな酸味も感じる。この酒は間違いなく米と米麹が主原料だが、なぜ果物のような日本酒ができるのか?まずはいち早く体験した、dancyu食いしん坊倶楽部メンバーの声を紹介しよう。
果物のような香りの秘密は「月桂冠」が今まで培ってきた日本酒の醸造技術にある。天然の桃や葡萄に含まれる香気成分を、発酵により生み出す方法を開発し、伝統的な醸造技術とかけ合わせて実現したというのだ。
「果月 桃」は、まさに香りが桃そのもので甘酸っぱく、「果月 葡萄」は巨峰のようなとろみのある甘味が口に広がる。合わせたくなるのは、どちらかというと洋食。メンバーからも、生ハムやチーズを使った料理と相性が良さそうという意見が多く寄せられた。
そこで、イタリアンの名店「ピッツェリアジターリア・ダ・フィリッポ」のオーナーシェフ、岩澤正和さんに「果月」を体験してもらったところ、「辛口のワインと併用で飲みたくなる軽くて新しい味」と感嘆。トマトとチーズを使ったマルゲリータや、マリネした猪を野菜とともに炙ったものなど、一般的な日本酒には合わせにくい料理の数々を薦めてくれた。
試して納得。酒が持つ果実味と旨味の強いチーズや肉が調和し、野菜が重なると「果月」の優しい酸味が引き立つ。力強い素材にも難なく寄り添うところは、さすが柔軟性のある日本酒の本領。いろいろな料理と楽しみたい。
まろやかな桃風味の「果月 桃」には、国産小麦と酸味の強いトマトを使った“マルゲリータ”がぴったり。桃の丸い香味が、バジルの甘い香りを引き立てる。トマトの甘酸っぱさで酒の味がより軽快に。酒の旨味はピッツァの生地の穀物感とも調和する。
巨峰の果実感を思わせる「果月 葡萄」は生ハムと相性抜群だが、今回は店らしい味として赤ワインの搾り滓に約1週間漬けてから焼いた“マリネした猪の炙り赤玉ねぎのマルメラータ添え”とともに。香ばしい肉の甘い脂が酒の甘味と、まったりからみ合い口中が幸せでいっぱいになる。
馴染み深い食パンで4種の味わいが楽しめるトーストを考案した岩澤シェフは語る。「“桃”の果汁感は柑橘類の酸味と相性がよく、チーズの塩気や旨味は互いの味を一つにまとめます。蜂蜜はさらに“桃”の甘みを豊かに。この酒は食材に合わせやすいので、パンの枚数を増やし、他の具材を自由にのせて食べるのも楽しい。家飲みやパーティにもぴったりです」
食パン | 4枚(6枚切り) |
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モッツァレラチーズ | 100g |
ゴルゴンゾーラチーズ | 100g |
粉チーズ | 20g |
河内晩柑(かわちばんかん) | 2房(その他の柑橘でも可) |
無花果(いちじく) | 1/4カット |
無塩ロースト胡桃 | 約8個 |
黒胡椒 | 適宜 |
蜂蜜 | お好みで |
食パンの耳を切り落とす。まな板の上に食パンを並べ、大きな正方形をつくる。並べた食パンの内側をめん棒で潰して一枚の生地にする。(全体を潰せばクリスピーな仕上がりになるのでお好みで)。
細かくちぎったモッツァレラチーズとゴルゴンゾーラチーズを、全体にまんべんなく乗せる。半分にカットした無花果を一角に乗せ、粉チーズをかける。黒胡椒を振り、全体にオリーブオイルをまわしかける。
200℃のオーブンで約5分焼く。家庭では半分のサイズにしてトースターで焼いてもよい。
焼きあがったらそれぞれの一角に河内晩柑と胡桃を乗せ、蜂蜜を添えて完成。
「店では本来、フレッシュなぶどうを乗せて完成する一皿です。巨峰のような甘味がある“葡萄”の香りで味わいを補いました。日本酒の旨味も料理の素材を引き立てます」と岩澤シェフ。素材感が出る料理なのでオリーブオイルはできるだけ上等なものを使うとよいそうだ。
生ハム | 20g |
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モッツァレラチーズ | 100g |
ルッコラ | 一束 |
エキストラヴァージンオイル | 大さじ1.5 |
ざっと刻んだルッコラを皿の上に乗せる。生ハムを適宜ちぎってルッコラの上にまんべんなく散らす。
モッツァレラチーズを真ん中から二つに割り、中心に乗せる。E.V.オイルをまわしかけて完成。
ストップ!20歳未満飲酒・飲酒運転
1979年茅ヶ崎生まれ。同店の他「オップラ・ダ・ジターリア」なども経営。2006年にナポリピッツァの世界大会で1位に輝き注目を集める。地元だけではなく全国へ食材探しの旅も続ける。
ピッツェリア ジターリア・ダ・フィリッポ
【住所】東京都練馬区石神井町2‐13‐5
【電話番号】03‐5923‐9783
【営業時間】12:00~14:30(L.O.) 18:00~22:00(L.O.)
【定休日】木曜
文:山内聖子 写真:森本真哉