絶賛発売中のdancyuムック「dancyu定番シリーズたまご料理57皿」では、バリエーションに富んだたまご料理をご紹介しています。その中から食を専門とするライターが、気になるレシピを試作してレポート。二人の息子さんのお母さんでもある鈴木美和さんの、夏に食べたいたまご料理とは?
毎日の食事づくりに頭を悩ませている働く母(私のこと)にとって、たまごは救世主のような存在だ。なぜなら、仕事で疲れて帰ってきて、冷蔵庫の中にロクなものがなくても、たまごはいつでも、お行儀よく並んで出番を待ってくれている。なんて健気な(感涙)。改めて、たまごってありがたい!
今回は「夏」をテーマに『dancyu定番シリーズ たまご料理57皿』から3品を選んでみた。1品目は旬の素材を使った「トマトと炒り卵のバジル炒め」。新鮮な生きくらげやバジル、露地栽培のトマトが手に入るのは、今の季節ならでは。何より、色鮮やかで元気が出そう。
2品目は酢の酸味と黒胡椒の辛味をきかせた麺料理「酸辣湯麺」。早くも夏バテ気味の体に喝を入れつつ、これから来る本格的な暑さを乗り切れるようにしたい。麺は食欲のないときにもスルスルと喉を通るから、覚えておくと便利かも。
3品目は息子たちからのリクエストで「揚げたまごTKG」。わかる~。夏って、なぜか揚げ物が無性に食べたくなるもんね。しかし、たまごを自分で揚げるなんて人生初☆。大丈夫か、私?!
炒める、煮込む、揚げると調理法や味つけも異なる3品で、たまご料理の達人に近づけるか?乞うご期待!
材料を切って、炒めて、トータル10分足らずで完成。味つけは塩、胡椒だけなのに、時短レシピとは思えない味わい深さに唸る。ビールでもご飯でもいけるじゃないですか!
炒めることでグッと旨みを増したトマト、ほろ苦く爽やかに香るバジル、弾力あるきくらげと、クセ強な食材ばかりだけれど、全体にやさしく絡むたまごの懐の深さに改めて感服。主菜がたとえスーパーのコロッケだとしても、これ1品で食卓がパッと華やかになるのがいい。
残業で遅くなった夫が軽く食べたいと言うので、(白飯も残ってないし)こちらをチョイス。具は豚肉、野菜、きのこと栄養バランスが良く、鶏ガラスープで煮るだけだから失敗知らず。それぞれの食材をつなげ、全体を一つにまとめ上げるたまごは、若手俳優ばかりを集めたドラマに投入された重鎮の名バイプレーヤーといったところ。“酸っぱ辛い”刺激と、まろやかなたまごの駆け引きも絶妙で、案の定、絶賛いただきました(笑)。1品で満足の完全バランス食。ランチにも夜食にも使えそうだな~。
白身のカリッと焦げた香ばしさ、とろ~り流れる黄身の濃厚さ。たまごには不似合いな“攻めてる味”というか。「え?あの従順で優しいたまごにこんな一面があったなんて」とギャップ萌え必至です。子どもたちも「ママ、これおいしいね~!」と大喜びで、珍しくご飯をお代わりしたりして。胡麻油を効かせたねぎだれが揚げたまごのコクを引き立て、うっかり無限ループ(たまご3個お代わりとか)しそうで危ない危ない(笑)。わが家の定番おかずに秒で決定いたしました。
「たまごは1日1個、朝食で食べるもの」という長年の思い込みと習慣から、たまご料理にあまり熱意のない人生を送ってきてしまった私(そういう人、意外と多い気がするんですが…)。結論から言うと、たまご料理はめちゃくちゃ面白い!
考えてみたら、たまごは主菜、副菜、デザートとなんでもこなせる万能選手。主張の強い食材と組み合わせても、持ち前の人当たりの良さ?でなんなく打ち解け、縁の下の力持ちとしていい仕事をしてくれる。恐るべきコミュニケーション強者である。そりゃ、世界中どの国でも愛されるはずだわ~と妙に納得してしまった。
今回の3品は永遠の定番といってもいいレシピだと思う。とりわけ、油で揚げたら水が跳ねそうで、これまで手を出さなかった「揚げたまご」は悶絶モノのおいしさでした。勇気を出してぜひトライを!これからも『dancyu定番シリーズ たまご料理57皿』を手に、「初めての」たまご料理をたくさん体験できるかと思うと心からワクワクする。かつての私のように、「夕食にたまごなんて?!」と思っている方に、ぜひ手にとっていただきたい一冊だ。
文・写真:鈴木美和
各たまご料理の詳しいレシピは、『dancyu定番シリーズ たまご料理57皿』に掲載されています。