たまご料理体験記
たまご好きライターが「どうしてもつくりたかった」たまご料理3皿

たまご好きライターが「どうしてもつくりたかった」たまご料理3皿

絶賛発売中のdancyuムック「dancyu定番シリーズたまご料理57皿」では、バリエーションに富んだたまご料理をご紹介しています。今回はその中から、どうしてもつくってみたい!気になるレシピを食いしん坊ライターさんに試作してもらいました。一人目は、たまごを食べない日はほぼないという鹿野真砂美さんの、脱定番のお話です。

たまごはすでに親友。冒険する必要はあるのか、いざ検証!

たまごさえあれば、なんとかなる。子供の頃から、それはずっと感じていた。大家族だった実家の冷蔵庫には、常に3~4パックの卵が入っていたし、一人暮らしのときも、二人暮らしのいまも、食べない日がほとんどないくらい、日々の食生活は、たまごさえあれば、本当になんとかなっている。

ただ、つくる料理はだいたい定番化していて、特に冒険するようなこともないんだよなぁ。毎日、変わらずおいしい安心感、みたいなところが、たまご料理の魅力のひとつだとも思うし。なんてことを思いながら、先ごろ発売された「たまご料理」のムックをパラパラとめくっていたら、編集部から「実際につくって感想を寄せてもらえませんか?」とのミッションが。ぼんやりとページをめくっていた手に、途端に緊張感がみなぎる。気になる料理はいろいろあるけれど、ここは、最初に本を開いたときに、あ、これ食べてみたいな、と思った3品をつくってみることに決定。

具沢山で豪華なご飯の友になる、「中華風茶碗蒸し」

わが家の朝食に、たびたび登場するのが茶碗蒸し。凝った具は入れずに卵液のみか、豆腐を入れた空也蒸しにするのが定番だ。朝から茶碗蒸しなんて面倒そうに思えるけれど、他のおかずを支度する間、蒸籠に入れておくだけでいいから、忙しいときにはかえって楽チンなのである。熱々のほわほわに、とろとろのあんをかけて。夏場は前日につくって冷やしておき、たまご豆腐として楽しむことも。

と、前置きが長くなったが、平日の朝ご飯に、「赤坂璃宮」譚彦彬シェフの中華風茶碗蒸しをつくってみた。起き抜けからアタフタしたくないので、挽き肉をゆでたり、干し海老を戻したりといった下ごしらえは前夜のうちに。ゆで汁と戻し汁も捨てずに鶏ガラスープと合わせて旨味増強。仕上げにジュッとかけるねぎ油も、長ねぎの青いところを使って自作した。

ポイントをきっちり守りつつ完成した茶碗蒸しは、いつもつくっているものよりも、ぐっと“おかず感”があって、そのままはもちろん、ご飯にかけたらもう最高。醤油だれに少量加えたナムプラーの風味が、すごく異国的でいいアクセントになってるんだなぁ。朝ご飯のおかずとしては豪華だけれど、リピート決定。夫と取り合いになったので、次はひとり分ずつ、どんぶりでつくって独り占めしたい。

中華風茶碗蒸し

しっとりねっとり、「かぶとうずら卵のレモン醤油漬け」

うずらの卵の殻の模様は、同じ親から産まれた卵はすべて同じ模様になると聞いて以来、10個入りのパックを買うと、ひとつひとつ模様をチェックするようになった。偶然同じパックに兄弟がいたら、きっと感動するよね。そんな豆知識はさておき、次につくったのは、平野由希子さんの、かぶとうずら卵のレモン醤油漬け。


平野さんには、取材やプライベートでもたくさんお世話になっていて、彼女がつくる料理のおいしさはもちろん、酒飲みとして男前なところも、とても信頼している。かぶとうずらの卵って、なかなか想像ができない組み合わせだけれど、そこは平野さんだもん、いいつまみになるはず!と確信して、週末の晩酌用にうきうきと仕込んでみた。


皮ごと漬けたかぶの、しんなりとシャッキリが同居する食感もさることながら、一晩で中心までしっかりと味がしみ込んだうずら卵の、しっとりねっとりが、なんともくせになる。いわゆる醤油味の漬物や味玉ともちょっと違う、すっきりと洗練された味わいは、レモンのなせる技。果汁だけでなく削った皮を加えて、ほんのりビターなニュアンスを出しているところがニクい。このレモンが、白ワインとうまく繋いでくれるんだろうなぁ。あっという間にボトルが1本カラに。


材料のうずら卵6個のところを10個使ったけれど、パクパクとあっという間になくなるので、次はもっと漬けてみたい。これは水煮よりも断然、自分でゆでて殻をむくほうが、食感もよくてお薦め(兄弟探しもできるし)。ちなみに、残った漬け汁を利用して冷やし中華のたれをつくったら、レモンとかぶの風味が加わって、とてもおいしかったことを、ご報告します。

かぶとうずら卵のレモン醤油漬け

卵4個もぺろり!「スリランカたまごカレー」

日曜日の昼ご飯は、コウケンテツさんのスリランカたまごカレーにチャレンジ。本を見た瞬間、真っ先にこれは絶対につくろう!と決めていたのだ。だって、スリランカ、たまご、カレー。好きな要素が3つも揃っているんだもの。
3年ほど前、バックパックひとつでスリランカを旅したことがある。窓もドアも全開のディーゼル列車やバスを乗り継ぎ、料理上手なお母さんのゲストハウスで料理を教わったり、ローカルな食堂に入ったり、大きな青果市場に潜入してみたり。そして、滞在中のほとんどを菜食で過ごし、カトラリーを使わず手食で通した経験が、とても体になじんで心地よかったのだ。だから、肉が入らないたまごカレーには、とてもそそられた。

レシピを読むと、おそらくスリランカそのまんまというよりは、つくりやすいよう、コウさんがアレンジしたのだろうと想像できる部分がいくつかある。韓国産の粉唐辛子とか、赤玉ねぎはきっとホムデンの代わりかな、とか。こぶみかんの葉は、たぶんカレーリーフかパンダンリーフの代用なのだと思う。こぶみかんならネットでも比較的、手に入れやすいし。ベランダで育てているカレーリーフを使おうかなとも思ったが、いや、ここはレシピ通りにきっちりやってみることに。たまたま、タイ料理のレシピ取材をしたときの試作用に買ったこぶみかんがまだあったのだ。
誌面に、いちばん手間なのは、ゆでたまごの殻をむくこと、と書いてある通り、材料さえ揃えたら、あとは流れでどんどんフライパンに入れていくだけなので本当に簡単。漂ってくる香りは、こぶみかんだとやっぱりタイ料理っぽいかもしれない。湯取り式で炊いたジャスミンライスとたまごカレーの他に、スリランカのキャベツのマッルン(蒸し炒め的なもの)をつくり、パパダムも揚げて一緒に盛り付け、スリランカ気分を上げた。器はインドだけど。

なんだかんだ書いたが、カレーはもちろんとてもおいしい。辛みも穏やかで、ココナッツミルクの優しい甘さと、とろみがあって。たまごを指先で崩し(当然、手食です)、ジャスミンライスとこねこねしながら食べたら、心は南国へひとっ飛び。ああ、旅したいなぁ、と妄想しながらがっついていたら、一人分たまご4個があっという間に胃の中へ消えていった。

スリランカたまごカレー

新しいたまご料理に挑戦した感想は?

毎日、欠かさない食材の割には、いつもの味だけで満足してしまっていたたまご料理に、新しいレパートリーが増えてとても嬉しい。10年ほど前、『dancyu』編集部に在籍していた時代に、たまご特集の編集を2回、経験したけれど、身近な食材なだけに、メニュー選びや新鮮な切り口を見つけるのに、とても悩んだ記憶がある。今回のたまご料理ムックを読んでみて、定番料理の普遍的な魅力はもちろんのこと、食材の組み合わせや、見せ方の部分で新味を感じられるところもいろいろあったのが収穫。過去に本誌で掲載した中からピックアップした選抜たまご料理だからこそ、そこがより明確になったのかも。次はエッグベネディクトに挑戦してみよう~。

文・写真:鹿野真砂美

各たまご料理の詳しいレシピは、『dancyu定番シリーズ たまご料理57皿』に掲載されています。

dancyu定番シリーズ「たまご料理57皿」
dancyu定番シリーズ「たまご料理57皿」
A4変型判(112頁)
2021年5月31日発売/880円(税込)
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鹿野 真砂美

鹿野 真砂美 (ライター)

1969年東京下町生まれ。酒と食を中心に執筆するフリーライター。かつて「dancyu」本誌の編集部にも6年ほど在籍。現在は雑誌のほか、シェフや料理研究家のレシピ本の編集、執筆に携わる。料理は食べることと同じくらい、つくるのも好き。江戸前の海苔漁師だった祖父と料理上手な祖母、小料理屋を営んでいた両親のもと大きく育てられ、今は肉シェフと呼ばれるオットに肥育されながら、まだまだすくすく成長中。