怪魚の食卓
シマガツオってどんな味?|怪魚の食卓58

シマガツオってどんな味?|怪魚の食卓58

「シマガツオ」という魚をご存知だろうか。なかなか特徴を掴みづらい怪魚なのだが、どう食べるのが美味しいのだろう?グロテスクだったり、生態が摩訶不思議だったりする怪魚たち。日本にいるまだまだ知られていない美味しい怪魚をご紹介します。

名前の由来も味わいも定まらない「シマガツオ」

体長50cmほどの大型魚で、名にカツオとあるが体型はまったく似ていない。口先から額にかけての部分が大きく張り出しており、体型がマナガツオに似ているからこの名がつけられたと思われる。「シマ」の由来は不明だ。漁師さんはシマガツオと呼ぶことが少なく「エチオピア」が通り名になっている。省略して「ピア」とも呼ぶ。エチオピアのいわれもこれまた不明だ。神奈川県の漁師さんは「オッペタンコ」と呼んだりする。体が押しつぶされたように平たいから「ぺったんこ」の方言に違いない。

海中では銀白色だが、死後はたちまち全身が漆黒に変化する。体には大きなウロコがびっしりと張り付き、背ビレと尻ビレにもウロコがある。皮膚は厚く、どこか野武士を思わせるような無骨さだ。北太平洋に広く分布し、今では行われていないサケ・マス流し網漁という漁法で大量に混獲されていたが、見かけが悪いせいだろうか、ほとんど利用されることがなかった。でも近頃ではマグロ延縄漁で混獲されたものが食用として市場に出回っている。店頭には切り身で並ぶことが多い。

身質はきれいな白身で、平べったい魚ではあるけれど厚みがあってボリューム感がある。美味と評する人もいるけれど、実は評価が分かれる。あっさり味を好む方にはおいしく感じられるだろうし、淡泊過ぎる……と思う方も少なくない。また、やや水っぽくて脂肪分は少なく、ほのかな酸味も感じる。贔屓目に言えば嫌みのない味なのだが、塩焼きや煮ものではどこかもの足りなさを感じる。刺身で食べてもなにかひと味足りない。生食ならばヅケや味噌たたきがいい。そして油との相性がよいので、唐揚げやバター焼き、ムニエルなどにむいている。ぶつぎりを唐揚げにして野菜などと炒めてあんをかけるという中華風もいい。フライにすればやわらかい食感がよく、ボリューム感も、油、衣、白身のバランスも抜群だ。ネギマヨネーズを添えれば淡泊な白身のおいしさを一段と高めてくれる。

シマガツオのフライ
1 切り身を手に入れる。ウロコや骨を取り除いて適度な大きさに切り分ける。
2 塩とコショウで下味をつけ、薄力粉、溶き卵、パン粉の順にまぶして温めた油で揚げる。
3 マヨネーズと長ネギみじん切りを和えて②の上に添える。
シマガツオのフライ

解説

野村祐三

日本全国の漁師町を精力的に取材して50年。漁師料理に関する経験と知識は右に出る者なし。『旬のうまい魚を知る本』『豪快にっぽん漁師料理』など地魚の著書多数。

文:小泉しゃこ イラスト:田渕正敏