サブカルチャーの聖地として有名な東京・下北沢は、カレーの町としても知られています。その群雄割拠な町で、現役の中では最長老と言われている店「茄子おやじ」に松尾貴史さんは訪れました。そのユニークな店名の由来とは。
日本を代表するカレーの街のひとつ下北沢で、現存するカレー専門店としてはおそらく最古の有名店「茄子おやじ」。
初代のご主人、阿部さんとは、もちろん「茄子おやじ」と私がオーナーを務める「般゜若(パンニャ)」が同じ地域のカレー店の先輩後輩の間柄でもあるけれど、子供の保育園も同じ時期があり、子供の送り迎えの時によく顔も合わせていた。
開店25周年の時は、「茄子おやじ」店内で私のトークショーを開催してくださり、大いに盛り上がった思い出もある。
店名の由来は、吉祥寺の「まめ蔵」で修行時代、茄子の味見が大好きだった阿部さんを、みんながそのあだ名で呼ぶようになったことからだと聞いた。数年前、ご高齢のご両親の近くに住まわれることになり、今は八高線と東武東上線の小川町駅から500mほどのところで、「小川ぐらしの茄子おやじ」の店名でカレーを提供されている。
下北沢の店は、二代目を受け継ぐ店長西村さんが切り盛りされている。店内は、さすがサブカルチャーの聖地下北沢らしさが凝縮された雰囲気で、ついつい長居をしてしまいたくなる居心地の良さがある。
久しぶりにうかがって、ビーフ、チキン、野菜などトッピングアイテムが揃い踏みの「スペシャル」をいただいた。
大きく横たわる縦切りの茄子が安心感のある味わいがあり、懐かしい中にも積み重なった工夫と個性の感じられる優しい辛さで、この街の音楽関係者や演劇人に愛される必然を感じる。
これからも歴史を積み重ねて、カレー好きの味方でい続けてほしい名店だ。
文・写真:松尾貴史