松尾貴史のカレードスコープ
鳥取・米子でカレーといえば......|松尾貴史のカレードスコープ⑤

鳥取・米子でカレーといえば......|松尾貴史のカレードスコープ⑤

普段はなかなかいかない地にきても相変わらずカレーを探す松尾さん。鳥取で見つけた滋味深いカレーとは。

生卵とウスターソースはお約束!?

島根県の美保関で佐野史郎さんの朗読会を観に行って、鳥取県の米子で宿を取った。せっかく普段来ないところへ来たのだから、とウロウロしたり地元の方に聞いたりで、ホテルの人から「米子でカレーと言えば『とんきん』でしょう」と教えられたが、11時開店のようで、11時25分の特急に乗らねばならず、乗り遅れる可能性大であきらめた。しかし店の外観だけでも写真に収めようと行ってみた。
ところが、コロナ禍の怪我の功名か、10時半頃すでに「営業中」のプレートがかかっている。「いらっしゃい、どうぞ~」という声をいただき、カウンターに着いて、インドカレーに生卵が付いた玉子カレー(550円)とサラダ(200円)を注文した。
外観の写真を撮り忘れたことに気づき、外に出て戻ったら、もうカレーがカウンターに置かれていた。程なくしてサラダも出たので野菜をワシワシ食べて、カレーを一口。
オーソドックスなのだけれど、滋味があり、辛味が思ったより強い好みの塩梅だった。
生卵を乗せるのはやはり関西以西のなじみだろう。そして、目の前にはウスターソースが置かれている。西日本(特に大阪)のスーパーマーケットには、ウスター、中濃、とんかつ、お好み焼き、たこ焼き、どろ、リーペリンなど、多いところは30~40種類も置かれているほど、ソースに対する愛着が強い。試しに小さくひと回しかけてみると、やはり味に奥行きが出てくる。
ソースの材料は玉ねぎ、トマトなどの野菜、果実、シナモン、クローブ、胡椒といったものなので、カレーに合わないわけがないのだ。
はたして、列車には十分間に合う時間に食べ終わることができた。
年配のご姉妹が切り盛りされている様子で、「なぜこの店名なのですか?」と聞いてみたら、「トンキン湾っていう台湾(?)のほうの地名だそうですよ。何でその地名を店の名前にしたのか私たちもわからないんです」と答えてくださった。トンキン湾はベトナムの方だったと思うが、何か先代が思い出をお持ちだったのだろうか。
快適な応対で雰囲気も良く、また米子に来たら立ち寄ろう。

カレー
関西でおなじみの生卵が入った「玉子カレー」。
外観

店舗情報店舗情報

とんきん
  • 【住所】鳥取県米子市茶町10
  • 【電話番号】0859-33-8170
  • 【営業時間】10:30~14:00
  • 【定休日】火曜日
  • 【アクセス】JR「米子駅」より7分

文・写真:松尾貴史

松尾 貴史

松尾 貴史 (俳優、タレント、ナレーター、コラムニスト)

1960年5月11日生まれ。神戸市出身。大阪芸術大学デザイン学科卒業。 俳優、タレント、コラムニスト、“折り顔”作家など幅広く活躍。下北沢のカレー店「般゜若」(パンニャ)店主。著書に『人は違和感が9割』、『違和感ワンダーランド』、『ニッポンの違和感』(毎日新聞出版社)等がある。