和洋中、どの料理でも見かけるパセリのお話。豊洲市場の文化団体「銀鱗会」の事務局長である福地享子さんが、2018年11月までdancyu本誌で執筆していた「築地旬ばなし」の転載です。
河岸で売っているパセリの束は、チアリーダーのポンポンみたいにデッカイ。夫婦ふたりっきりのわが家だけど、ポンポンみたいにはずむ気持ちで買って帰る。
まずは、新じゃがを蒸かして、刻みパセリをいっぱい入れた白と緑のポテサラをつくろう。ひき肉のつぎに多いのがパセリ、というドライカレーもつくらなくちゃ。これは10人分ぐらいはつくって、余ったぶんは冷凍しておけば、トーストや焼きうどんに使える。お昼に食べるマッシュポテトとひき肉を段々にして焼くシェパーズパイも、ドライカレーができてると楽ちんだ。パセリを刻むときは、どうせだから、大量に刻む。小分けしてラップに包んで冷凍、チャーハンや野菜炒め、つまりはあらゆる炒め物に投入する。スープにもソースにもサラダにも。こうしてパセリのポンポンは、ちゃんとふたりの胃の腑におさまってしまう。
パセリに目覚めたのは、河岸の「政義青果」で聞いた「パセリが売れない」のひとことだった。パセリといえば、どこにでも顔を出す「付け合せ」という役どころだ。洋野菜なのに、刺身にまで!この鷹揚な役どころは、魚河岸と大根河岸とが合体して誕生した築地市場開場とともに始まった。それまでもカツレツなど洋食の付け合せには使われていたが、魚河岸といっしょになったのなら、と大根河岸の洋野菜屋が「刺身のつま」に売りこんだのだ。結果は大当たり。どこにでも顔を出せる付け合せ重鎮の地位を得たのだった。
やがて付け合せ界は、百花繚乱の世界に突入。さまざまなハーブ、葉っぱに花も進出。パセリは、飽きられた。
落ち目のパセリを料理に使い、ささやかながら消費量アップにご協力!と始めたのである。付き合ってみれば、まことにいいやつ。料理素材として主役こそ張れないが、チョイ役としてほぼ万能。2年越しのパセリ愛、これからも続く。
文:福地享子 写真:平野太呂
※この記事はdancyu2017年5月号に掲載したものです。