不動前にある「ティスカリ」では、羊飼いのカリスマと呼ばれる酒井伸吾さんの極上の羊肉が楽しめます。お好きなみなさんならご存じのように、羊はクサいとか、カタいとか、そんなのは昔の話。今や幅広いジャンルで、香り高く軽やかで、素晴らしくおいしい羊料理が食べられます。そんな羊がおいしい店をご紹介します!
イタリア・サルデーニャ料理店にして「羊料理研究所」をうたう店には、毎月2回、北海道から半頭分の羊の枝肉が届く。解体するのは、近谷雄一シェフ自身。さまざまに料理される中、スペシャリテに君臨するのが“スーパーラムチョップ”だ。
「なぜ、スーパー?」と食べてみれば、舞い降りたのは、天使のような汚れなき味わい。噛んでも噛んでも澄んだ旨味だけがわき上がり、後を追う青い草の香りまで清らかなのである。
この羊を育てるのは、羊飼いのカリスマと言われる酒井伸吾さんだ。北海道白糠町の牧場では、約300頭がのんびり草を食みながら暮らしている。
「酒井さんが大事にするのは、健康な母羊を育てること。それがおいしさにつながると言うんです。風通しのいい羊舎は、寝転がれるほどきれいですよ」
出荷も羊の成長で決め、初夏はマトンとラムの間のホゲットがメインに。
「赤身と脂身のバランスが最高」とシェフが太鼓判を押すロース肉はラムを超えるおいしさ。だからスーパーなのだ。
皿の上にはとろとろのバラ肉ロールも盛り込まれ、これも絶品。硬い部位や端切れ肉を巻き込み、羊の骨のだしで煮込んでいる。「大切に育てられた羊だから余すところなく使いたい」というシェフの愛情もスーパー級だ。
文:上島寿子 写真:飯貝拓司
※この記事の内容はdancyu2018年6月号に掲載したものです。