明日、どこに食べに行こう?
薫りが最高!「あげつき」|個性が光る東京のとんかつ②

薫りが最高!「あげつき」|個性が光る東京のとんかつ②

東京・神楽坂にある「あげつき」には、並んででも食べたい、薫り豊かでやわらかなとんかつが楽しめます!午後に備えるランチタイムに、仕事上がりの労いに、いいことがあったときのご褒美に。旨いとんかつ店を知っていれば、人生は最高になる。

柔らかさ、旨味、そして薫り。これぞ、三方よし!

覚悟しておいてほしいが、とにかくじらされる。行列をなす店に入るまでに数十分、オーダー後も最低30分はおあずけ状態。だが、それだけの価値は、確かにある。

店主の保科剛さんが惚れた豚は、宮崎産の希少種である南の島豚で、脂は甘く、旨味が強くまろやか。その中でも繊細な肉質と味わいのヒレは、しっとりとした上機嫌を保つのが難しく、今でも揚げるたびに緊張する相手だそう。だから扱うときは慎重に、優しく、どこまでも紳士的に接する。最初は、ちゃんと揚がっているのかと不安になるほど、油の中で静かにゆっくりと遊ばせる。高温で二度揚げをして、余分な油をきってからも、蒸らしのためにひと休み……を経て、ようやく対面だ。

とんかつ
「南の島豚 特上ヒレかつ」一頭から2本のみ取れ、さらにその中央部分だけを使う特上ヒレかつは2,950円で数量限定。ご飯や味噌汁などが付く定食は+360円。

近づくと華やかな薫りがして、触れるとどこもかしこも柔らかい。くどさのない旨味がしっかりと感じられる。「蒸すための道具」という衣は、味も食感も主張しすぎず、油は後味がすっきり。名脇役たちに引き立てられた主役の肉が清々しい香気を放っていて、パンチのある揚げ物というより、品の良い肉料理といった風情になる。待ち焦がれて会っても期待を裏切らず、むしろ夢中にさせる「いい女」なヒレかつ。時間をかけて育て上げる保科さんは、なかなかの策士だ。

保科剛さん
店主の保科剛(ほしなごう)さん。
日本酒
日本酒の揃えが秀逸で、とんかつには薫りが開く燗を推奨。ヒレには“玉櫻”、ロースには“生酛のどぶ”がお薦め。一合980円。

ここに技あり!

肉
肉の水分をできる限り逃がさないために、側面のみ粉と卵を二度づけ。パン粉は赤子をあやすようにホワホワッと躍らせ密着させる。
店内
2010年開店。予約不可。予算は昼1,100円~、夜2,000円~、カードは夜のみ可。20席。

店舗情報店舗情報

あげつき
  • 【住所】東京都新宿区神楽坂3-2 山ノ内ビル地下1階
  • 【電話番号】03-6265-0029
  • 【営業時間】11:30~14:30(L.O.) 18:00~21:30(L.O.) 土曜の夜は17:30~ 日祝の夜は~20:30(L.O.) 全日売り切れ仕舞い
  • 【定休日】火曜
  • 【アクセス】各線「飯田橋駅」より4分

文:辻歌 写真:渡部健五

※この記事の内容はdancyu2018年10月号に掲載したものです。