錦糸町にある「サン ヤコピーノ」ではイタリアの各地で14年間修業したシェフの珠玉の料理が楽しめます。各地の郷土料理で彩ったイタリア地図のような料理をぜひ楽しんでみてください。
錦糸町で、忘れかけていたイタリアの味覚の記憶が一気に蘇った。北や南、海沿いの旅先で出会った人たちの表情や心遣い、景色も一緒にだ。
そりゃそうだ。ここのメニューに並ぶ料理の一つ一つが、元吉賢一シェフの辿った14年間のイタリア修業の軌跡そのものなのだから。
たとえば魚介スープのブロデットは、中東部マルケ州のアドリア海沿いの店にいた頃に、魚介スープのコンクールで優勝した思い入れのある一皿だし、飴色に光るトスカーナの郷土料理チョンチャはフィレンツェのリストランテでスーシェフを任されていた頃、ランチに何度も通った店で惚れ込み、必死になって教わったものだ。だからここの前菜の盛り合わせは、各地の郷土料理で彩ったイタリア地図のようで、いつ来てもワクワクする。
さらに驚くのが、サービスの嘉久和純子さんもプーリアやトスカーナで4年以上修業した料理人だということ。味、人、町に魅せられた二人のイタリア生活はそれぞれ14年と4年、計18年。その濃厚な修業の日々と熱い想いがすべてに注がれている。
食べ終わると夢見心地でこう思う。「ああ、イタリアに行きたい。出会った人たちと再会して、一緒にワインを傾けたい」と。
文:馬田 草織 写真:海老原 俊之
※この記事の内容はdancyu2017年11月号に掲載したものです。