日本の中心地であり、古今東西さまざまな美味なるものが集まる東京。そんな東京の食材や料理を表す言葉の語源や、美食の町の代表である銀座はどのように成り立ってきたかご存じですか?知れば東京がもっとおいしくなる豆知識をご紹介します。
①江戸の前の海、②そこで獲れる海産物、③東京風の調理法や味つけ……と、複数の意味をもつ。①は現在では東京湾全体を指すが「江戸時代後期の記録によれば、品川と深川を結んだごく狭い範囲だったのです」(築地場内「銀鱗文庫」福地享子さん)。漁具の発達や埋め立ての影響で、徐々に漁場が広がったという。
言葉の起源には諸説あるが、鰻を指して使われ始めた説が有力。鰻は比較的腐りにくいため、千葉産や神奈川産のものが江戸の魚屋に並んだ。その際、産地で区別するために「江戸前」と呼んだという(江戸前以外の鰻は「場違い」「旅もの」と呼んだ)。「“江戸前”は、いわば本邦初の産地ブランドですね」江戸前の魚は、身の締まりがよく脂ののりもよいそうだ。7月~8月の旬はスズキ、コチ、穴子など。
手みやげを渡す作法を、戦略的マナー講師・尾形圭子さんに伺った。「ビジネスの場では、名刺交換後に身分が上の方に渡します。すぐ開封するものではないので『袋のままで失礼いたします』と言い添え、そのまま渡すほうが親切です」
自宅を訪問する際は、部屋に通された後に渡すほうがベター(生ものの場合は玄関先で)。風呂敷や紙袋から出し、箱の正面を相手に向けて両手で渡す。紙袋は塵除けのためのものなので、畳んで自分の傍らにサッと忍ばせて持ち帰るとスマートだ。
つい言いがちな「つまらないものですが」は謙遜しすぎており現在ではNG。「近所で評判のお店でして」「○○がお好きだと伺いまして」などが適切。上手に渡せば会話の糸口や自己紹介代わりにもなり、場の雰囲気を和ませてくれるはず。
慶長17(1612)年、銀貨の鋳造・発行所が置かれたことから名のついた「銀座」。その繁栄は明治5年の大火に始まるのだと『銀座物語―煉瓦街を探訪する』(中公新書)の著者、野口孝一さんは言う。
焼け野原になった街を、政府が西洋化の手本として煉瓦街へと復興。当初こそ敬遠されたが、徐々に先進的な店が立ち並ぶように。政府機関が近く、新聞社など情報の発信拠点が置かれたこと、また貿易港の横浜と鉄道で繋がっていたことも手伝い、銀座は繁華街へと成長した。煉瓦街は関東大震災で焼失してしまったが、その成果は今の賑わいに表れている。
現在、銀座一丁目~八丁目には鮨屋が199軒、バー&キャバレーはなんと1866軒※。毎日1軒行っても、制覇に5年以上要する数だ。
※2017年6月2日現在、中央区保健所調べ。
イラスト:かざまりさ 文:森田彩子
※この記事の内容は2017年8月号に掲載したものです。