みんな大好きな焼肉ですが、メニューをみて頼むとき意外とわかっていない単語はありませんか?メニューに部位の説明が載っていることは多いけど、そもそも和牛と国産牛って何が違うの?なんで焼肉屋の箸は金属製?そんな今さら聞けない焼肉の基礎知識をご紹介します。
和牛、国産牛、ブランド牛……。一体何が違うのか、『大人の肉ドリル』の著者・松浦達也さんに伺った。「和牛と呼べるのは4品種だけです」。黒毛和種(黒毛和牛)、褐毛和種(あか牛)、日本短角種(短角牛)、無角和種。またこれらを掛け合わせた牛も含む。和牛の98%以上は霜降り肉で有名な黒毛和牛だという。それ以外の日本で育った牛が国産牛で、実態はホルスタインの雄や、和牛との交雑種などだ。
和牛のほか、国産牛や海外の牛肉にもブランドはある。基準はさまざまで、血統が条件となる神戸ビーフや最低月齢が規定された米沢牛など細かく決められたブランドもあれば、「県内で生産肥育された黒毛和種」などざっくりしたものも。「ブランドを背負っている牛肉はおいしい」と一概には言えないようだ。
「ナムル」という言葉のもつ意味は二つある。①食用の野菜・山菜・野草、②それらを生、もしくはゆでたのちに胡麻油や煎り胡麻などで和えたもの。大枠では、食べられる植物すべてが「ナムル」と呼べるようだ。
韓国において、料理の「ナムル」は欠かせない存在。祭祀では、供え物として白・青・黒の三色ナムルが用意される。白にはもやしや大根、青にはほうれん草や芹、黒にはぜんまいなどを使う。各家庭の冷蔵庫には数種のナムルが常備され、毎食の副菜として食卓に並ぶ“母の味”でもある。市場では、ナムル用の細切り野菜が数多く売られている。
本来は、季節の食材を和えて味わっていたナムル。現在はハウス栽培が増え、年間を通して多彩なナムルを楽しめる時代になった。
焼肉屋で出されるスッカラ(匙)と、チョッカラ(箸)。金属製のものが多いのはどうしてだろうか?月島の焼肉屋「韓灯」に聞いてみた。
一説によると、朝鮮王朝時代の宮廷では、銀製の匙と箸が重宝されていた。というのも、銀は硫黄やヒ素などの毒に反応し、黒く変色するから。「今でも金属の匙と箸を使うのは、その名残だと思います」。素材の金属は時代とともに変化し、高価な銀から安価な真鍮へ、現在は扱いやすいステンレスが席巻。銀製品は、もうほとんど見かけないという。
匙のくぼみが浅い形状には「韓国は匙文化の国。汁物を飲むだけでなく、ご飯をすくう、混ぜるのも匙一つで行なうため、しゃもじに近い平たい形になったのでは」との推察が。歴史と所以を知ると……心なしか、匙がいつもより少し重く感じる。
イラスト:かざまりさ 文:森田彩子
参考資料/朝倉敏夫『世界の食文化〈1〉韓国』(農山漁村文化協会)、金 日麗・鄭 大聲『韓国家庭料理入門』(農山漁村文化協会)、呉 善花『濃縮パック コリアンカルチャー』(三交社)
※この記事の内容は2017年10月号に掲載したものです。