明日、どこに食べに行こう?
羽釜で炊いた米の甘味が立っている「シチロカ」|食べると元気が出るおにぎり屋さん②

羽釜で炊いた米の甘味が立っている「シチロカ」|食べると元気が出るおにぎり屋さん②

人形町にある聞きなれない言葉が店名のおにぎり屋「シチロカ」。羽釜で炊いたお米と選び抜かれた素材でつくられる握り飯は、どこか懐かしいほっとする味わいです。

羽釜の美味しさが詰まっている

かしわめし
“かしわめし”250円。程よい大きさの鶏肉と炊き込みご飯が、にんじんの甘味を強調させ、ホッとする味を生み出している。
ぜいたく鮭
具の多くは築地で仕入れている。人気の“ぜいたく鮭”230円は塩麹に漬けた鮭をたっぷりと使用。

「シチロカ」のおにぎりは、朴訥である。まるで脱サラして開業した廣田顕さんの人柄がそのままおにぎりになったようだ。ただ、朴訥なだけではない。たとえば「シチロカ」という店名、ヒマラヤ辺りの未踏峰みたいだが、「活力」という熟語をパーツごとにバラバラにしてつくった造語なのだ!そういう具合に材料もつくりも抜かりない。秋田県大潟村産あきたこまちを羽釜で炊いたご飯は、ハツラツという言葉が似合うほどふっくらで、これを廣田さんは、独特のリズムで握る。
週に2回しかお目にかかれない“かしわめし”のおにぎりは、廣田さんの妻の故郷・九州がルーツ。妙々たる力加減で握られた、鶏だしの効いた炊き込みご飯は、口中で一瞬くっついた後ぱらりとほどける。それが鶏とほんのり甘いにんじんと一緒になると、口中一杯に素朴なのに重層的な旨味の渦が広がる。食べて一息つき「懐かしい」は味覚の一つなのだ、と思う。瞬間、すでに虜になっている。

廣田さん
量と大まかな形を型を使って調節したあと、独特なリズムで握っていく。
羽釜
米の旨味とふんわり感を出すために活躍しているのが、廣田さん自慢の羽釜だ。
店内
13種のおにぎりの中でも“いぶりがっこチーズ”の芳しさは必食。

店舗情報店舗情報

シチロカ
  • 【住所】東京都中央区日本橋人形町3-5-6榎本ビル1階
  • 【電話番号】070-6983-7602
  • 【営業時間】7:30~14:00 17:00~20:00(L.O.)金曜は14:00まで  土曜は9:00~14:00
  • 【定休日】日曜 祝日
  • 【アクセス】各線「人形町駅」A5出口より2分

文:加藤ジャンプ 写真:牧田健太郎

※この記事の内容はdancyu2018年11月号に掲載したものです。

加藤 ジャンプ

加藤 ジャンプ (文筆家)

1971年東京生まれ。横浜と東南アジア育ち。一橋大学卒業後、出版社勤務をへてフリー。酒と酒場、肴と酔っ払いを愛し、コの字酒場探検をつづける。著書に「コの字酒場はワンダーランド」(六耀社)などがある。テレビ「二軒目どうする?」(テレビ東京系)のおつまみさんとしても出演。ときどき絵も描く。