東京・日本橋にある「門洋菓子店」のシュークリームのカスタードには、メープルシロップが入っている。その甘味には、父から受け継いだ店を守る人の優しい気持ちがこもっているのです。
父から店を継いだ堀尾秀起さんが大切にしているのは、微笑ましくなるお菓子を世に送り出すこと。レシピはパティシエに任せながらも、創業以来続く世界観から逸脱しないよう見守っている。
たとえば、芸術的なフォルムの洋菓子も素敵だが、緊張して手をつけにくい。だからこそ、この店では素朴な見た目で、食べやすいシュークリームを売り続ける。2年ほど前からは、カスタードにメープルシロップを追加。やさしい余韻を残す風味ととろける味わいで、より愛らしさが強調されたのだ。
文:吉田彩乃 写真:竹之内祐幸
※この記事の内容はdancyu2019年4月号に掲載したものです。