金町にある「大力酒蔵」は店に漂うモクモクとした煙がどこか懐かしい気分になる焼肉酒場です。古き良き下町の美味しさが味わえます。
煙いのである。
大きなコの字カウンターにずらりとロースターが並ぶ。頭上にダクトなんて無い。もうもうもくもく。
もちろん味は、良い。ホルモンはどの部位も新鮮そのもので、歯ざわりも絶妙。カルビやハラミも、少々甘めのタレに漬け込んであって、これが強火で焼かれたニオイに、やられない人はいまい。もちろん、片手には焼酎ハイボール。だって、下町だもの。
たまに来てもホームのような気がするのは、切り盛りする二代目夫妻と女将さんの双子の妹さんが、遠い親戚ぐらいの距離感で愉快に接してくれるからだろう……なんて、わざわざ言うのは照れくさいことこの上ないが、ここなら煙に包まれて平気で口にできる。
近頃、五輪がらみでレガシー、レガシーと喧やかましいが、こここそ下町の煙のレガシーである、なんて嘯きながら、ずんずんぱくぱく食べても、もちろん懐には優しい。最高である。
文:加藤ジャンプ 写真:本野克佳
※この記事の内容はdancyu2017年10月号に掲載したものです。