カメラマンが、いつかまた食べたい料理
うなぎ、うなぎ、うなぎ|カメラマンが、いつかまた食べたい料理

うなぎ、うなぎ、うなぎ|カメラマンが、いつかまた食べたい料理

カメラマンの齋藤圭吾さん。今、食べに行きたい、会いに行きたい料理はなんですか?と聞くと……。

齋藤圭吾さんが食べに行きたいのは――。

美味しいうなぎは全国各地で出会うことができますが、効くうなぎにはなかなか出会うことができないものです。甘い辛い、柔らかめ硬め、パリパリしっとりふっくらと、うなぎの好みは人それぞれ。
あたしにとって、うなぎは効きの度合いがとても重要です。効くうなぎは食べ終わって30分ぐらい経つと、身体の内側からじわじわと力がみなぎってきます。
効きというのは、さばき方や蒸し方、焼き方によって変わるものなのか定かではありませんし、産地や天然か養殖かによって変わるわけでもないようです。おそらくですが、うなぎを滋養として身体で味わうのか、グルメとして舌で味わうのか、土地の風習や、店側の心意気などに大きく左右されるのではないかと思っています。
とにかく今まで食べた中で、てき面に効く写メが残っていたうなぎ屋さんを3軒ご紹介。

愛知・尾張瀬戸「うなぎ田代」のうな丼 大盛

愛知・尾張瀬戸「うなぎ田代」のれん
愛知・尾張瀬戸「うなぎ田代」のスタッフ
愛知・尾張瀬戸「うなぎ田代」のうな丼 大盛
念願叶ってやっと去年訪れることができました。神社の参道のひなびた商店街に並ぶ店先からはものすごい煙が立ち上っていて、ご主人がお一人でひっきりなしに活うなぎをさばいては串を打ち、汗だくで焼き続ける姿にグッと期待が高まります。西日本の蒸さずにじっくり焼く地焼きスタイル。ワイルドな歯ごたえで香ばしい焦げ目。帰り道、長い瀬戸の商店街をゆっくり歩き名古屋へ向かう名鉄電車の中あたりでぐわんと効きはじめます。知る限りでは日本で一番の効き目かもしれません。待ち時間4時間越えでしたが、それだけの価値はあります。

東京・南千住「尾花」のうな重

東京・南千住「尾花」のれん
うなぎ料理
うなぎ料理
東京・南千住「尾花」のうな重
言わずと知れた下町の名店。鰻ざくや鰻巻き、肝焼きや白焼きなんかと燗酒を2合ばかり注文してちびちびやりながら、メインのお重が出てくるのをのんびり待つ時間がまた良いわけです。お重は品良く甘さ控えめのタレで上品な見た目とはうらはらに効きは抜群。ここいらのうなぎで精をつけて、吉原あたりに繰り出したという江戸の遊びに思いを馳せたり、無駄なく動き回る女中さんたちを眺めたりしながら、一口ずつ丁寧に味わうお重は格別です。線路沿いの簡易宿舎などを横目に南千住駅に向かって歩き、小塚原刑場の跡地あたりでドクッと効きはじめます。

青森・青森「川よし」のうな重

うなぎ料理
青森・青森「川よし」のうな重
旅先でどうしても鰻が食べたくなって、効きは無いが美味しいだけでもかまわないからと、その街で評判のお店を調べて実際に食べてみると、「思いのほか効くやつだねぇ、これは」なんてことが極々たまにあります。こちらは地元では名店として知られ、歴史も長い大箱のお店ですが、期待せずにたまたま入ったお店でそこそこ効くうなぎに当たると、その喜びは倍増します。やはり燗酒と鰻ざくなどでちびちびやりながらお重のあがりを待ちます。写真は撮りそびれましたが、こちらでは地元で上がったマグロの漬けというメニューがあり、お酒がすすみます。お重はごく平均的な東日本の蒸してから焼くスタイルで、少し甘めのタレがとても美味しいのですが、店を出て次の酒場にのんびり歩き出す頃には、じんわりと身体が火照ってきて青森ベイブリッジに灯るあかりがキラキラと輝いて見えて、なんとも良い心持ちになっているのです。

写真・文:齋藤圭吾