カメラマンが、いつかまた食べたい料理
ニラソバ、あぶり軟骨そばとじゅーしー、パチャマンカ|カメラマンが、いつかまた食べたい料理

ニラソバ、あぶり軟骨そばとじゅーしー、パチャマンカ|カメラマンが、いつかまた食べたい料理

カメラマンの山田薫さん。今、食べに行きたい、会いに行きたい料理はなんですか?と聞くと……。

山田薫さんが食べに行きたいのは――。

東京・曙橋「敦煌」のニラソバ

東京・曙橋「敦煌」のニラソバ
気の置けない仲間と円卓を囲んでいただく丁寧な中華のコース料理。寡黙なお父さんのつくる素朴で優しい、そして美しい中華料理。そしてそれをそっと寄り添う様にサーブしてくれるお母さん。 二人で回す一見白々しいほどの明るい蛍光灯が照らす店内には、とても優しくてのんびりとした時間が流れる。 前菜からデザートまで、黄色い歓声の出ない品は一つもない。 360度食いしん坊達の満面の笑みだ。 円卓を囲めば調味料を取るのも、ピッチャーの水をもらうのも、食事のおかわりを頂くのも全部共同作業。 円卓ならではのパノラマヴューで、他愛もない会話と美味しい食事を満喫する。 それが僕の「いつかまた食べたい料理」の一皿、「敦煌」のニラソバだ。 今囲むのはzoom飲み会のモニターだけど、また落ち着いたら円卓を囲んでみんなで楽しく食事をしたい! それまではkeep distance!

沖縄・比屋根「すば処 うゎちち」のあぶり軟骨そばとじゅーしー

沖縄・比屋根「すば処 うゎちち」のあぶり軟骨そばとじゅーしー
燦々と輝く太陽、どこまでも続く青い空、何を思ったのか徒歩での移動を決意した沖縄の夏休み。せっかく来たのだからと美味しいものをたくさんはしごして頂こうと、黙々と灼熱の道を歩む。沖縄市泡瀬の「KRAMP COFFEE STORE」でホットサンドとカッサータサンドをモーニングに頂いた直後に徒歩で移動すること20分。 あまりの暑さに早速交通手段のミスチョイスを悟った。 召される! 全身から吹き出す汗!モーニングで採った水分全部出たのでは?なんで歩いてるの??と後悔しつつ、マジで召される5秒前に到着したのが、沖縄市比屋根にある「うゎちち」。 こちらではあぶり軟骨そばとじゅーしーを注文した。 沖縄の春菊、フーチバーはなんとフリーでトッピングし放題!あまりの香り高さにお店のおばちゃんにこれすごいですね!なんて話しかけたら、その辺の畑で採れたやつと教えてくれた。 沖縄のその辺の畑、マジですごい!そういえばさっきまでそんな風景だったかもしれない。 朦朧としてて覚えてないけど。 とにかくあの時食べたフーチバーにはものすごく癒された。 あっさりかつコクもある出汁の効いたつゆでいただく沖縄そばと煮込んだソーキを直火で炙ったあぶり軟骨、セットで頼めば50円安くなるじゅーしー。 それが僕の「いつかまた食べたい料理」の一皿、「すば処 うゎちち」 あぶり軟骨そばとじゅーしーだ。 夏休みにはまた沖縄に行けることを祈って、今はstay at home!

東京・深大寺「maruta」太田哲雄シェフのパチャマンカ

パチャマンカの準備
パチャマンカの準備
パチャマンカの準備
パチャマンカの準備
東京・深大寺「maruta」太田哲雄シェフのパチャマンカ
東京・深大寺「maruta」太田哲雄シェフのパチャマンカ
暖炉の薪火で焼いた料理を大皿に盛り、ロングテーブルを囲んで皆でシェアがコンセプトのとても素敵なレストランで、太田シェフが大変興味深い料理をすると聞き遊びに行った。その時頂いた料理が“パチャマンカ”だった。 パチャマンカは南米ペルーの伝統的な調理法で、お祝いの席などで提供される肉や野菜を蒸し焼きにしたアースオーブン料理だそう。 初めていただくアースオーブン料理に胸ときめかせ、食事の開始時間よりだいぶ早くお店に入った。 お店に到着すると、太田シェフはじめ「maruta」のスタッフ、さらにはお客さんまでもが協力してパチャマンカの準備をしていた。 キッチンでは太田シェフと、「maruta」の石松一樹シェフ、「サーモンアンンドトラウト」の森枝幹さん、「maruta」スタッフがバナナの皮に肉を包んで、丁寧にひとつづつ紐で縛っていく。紐もバナナの皮を細く割いてよった紐だ。 「maruta」には普段お店でも提供されているハーブや野菜を育てているとても素敵な庭があるのだが、その日はその庭に大きな穴が掘られていた。 その穴にはゴロゴロと大きな石と火のついた薪がくべられていて先に手伝いに来ていたお客さんが火の番をしている。 こんな体験を今までレストランでしたことがあっただろうか?いや、ない!! シェフ、お店のスタッフ、お客さんの共同作業で作られていく、しかもアースオーブンを使った一皿。早く食べたい! 下味をつけた野菜とバナナの葉に包んだ肉を、焼け石と共に穴に埋め蒸し焼きにすること3時間。辺りには美味しそうな香りが土中から漂っている。 日も暮れて真っ暗になった庭に出て、これまたみんなで食材を掘り起こす。シェフとスタッフは軍手にスコップ、お客さんはスマホのライトで手元を照らす。 一体感! 蜜でしかない、この一体感。土に埋まった食材を力を合わせて掘り出し歓喜する、これはまさに濃密な調味料。 みんなで掘り出したお肉と野菜は席に戻り、テーブルでシェアして頂いた。 長机で大皿をシェアするだけでなく、調理にも参加する濃密な経験。 それが僕の「いつかまた食べたい料理」の一皿、「maruta」太田シェフのパチャマンカだ。 これを書いていたら無性に太田シェフの料理が食べたくなった。世の中が落ち着いたら太田シェフの軽井沢のお店に行こうかな。 そんな日が早く来ることを祈って、今はおうちでstay chill.

写真・文:山田 薫