千葉の農家や漁師などは昨年、二つの台風で大きな被害を受け、いまだ影響が残っている場所もあります。野菜、果物、魚介、肉など、四季折々の多彩な食材に恵まれた千葉を、そして美味しい食を支えている生産者を、dancyuは応援します。その応援プロジェクトである「千葉応援クラウドファンディング」に参加していただいている生産者をご紹介します。安西農園では一般的なそら豆よりも茎を大きく育てるため、地中の養分をしっかり吸って、味が濃いものに育つ。
春から初夏にかけて、食卓を鮮やかな緑で彩るそら豆。千葉県の房州地域で育つそら豆は特に色が美しく、実がふくよかだ。旬は短く、5月の前半の2週間程度。この時期に大相撲夏場所が開幕することから、升席で提供されるおつまみとしても、房州そら豆は親しまれている。
千葉県館山市・安西農園では、甘みのしっかりとした打越緑(うちこしみどり)と生でも食べられるファーベの2種類を栽培している。安西淳さんによると「海に近いこの地域は砂地で水はけがいいから、野菜に余計な水分が入らず旨味が凝縮する」という。
さらに安西さんは、そら豆がより美味しく育つよう、通常よりも茎を太く、そして背が高くなるように育てている。茎がしっかりしていると、そのぶん根っこがしっかりと土のなかに広がり、ぐんぐんと栄養を吸収して味が豊かになるからだ。「打越緑は、一見、房が小ぶりに感じます。しかし、実はとっても大きくてふくよか。味も、口の中に残る甘みが特徴的で、他の品種とは一線を画しています」(安西さん)。
ファーベは、イタリア原産の品種だ。約20年前、まだ日本ではほとんどファーベが知られていなかった時期に安西さんは苗を入手し、館山でいちはやく栽培を始めた。「本場では、ヤギの乳からつくるペコリーノという、塩気が強くて少しクセのあるチーズと合わせて生のままサラダにして食べます。そら豆とチーズの味わいが豊かなので、オリーブオイルと粒こしょうを少しまぶすだけでも十分美味しい。ペコリーノ以外のチーズで代用してもかまいません」。トマトと一緒にサラダにしたり、フライドガーリックと合わせたりするのも、安西さんのおすすめだ。
文:吉田彩乃 写真:三木匡宏