山の音
夢よ、もう一度。
大森さんの写真 大森さんの写真

夢よ、もう一度。

現実で見る夢と睡眠中に見る夢は、同じ夢とは言うけれど、意味合いがまったく違っている。意識的な夢と無意識な夢。追い求める夢と突発的な夢。気がつけば、私たちは日常の中で夢を使いわけている。いずれにしても、夢は見ないより見る方がいいよね。

それぞれの夢の辻褄はまったくあわないのであるが

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自分が夢を見ていることに気づいている夢を明晰夢というそうですね。ボクの○○も明晰夢であるのだな。それを見ているときはそれが夢であるという自覚が確かにあって、○○のことも漢字2文字のことばでしっかりと確信していた。枕元にメモと筆記具を準備しておいて、起きたらすぐにメモするという習慣をつければかなりの夢は思い出せそうであるが、目が覚めるやいなやメモをとる、というのはちょっとしんどいように思える。
しかし、起きてベッドから出る瞬間、完全に目が覚めてから数秒も経たないうちにとてつもなくいろんなことを人間は忘れて行くのですね。

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もし、見た夢のほとんど全部を記憶していたら気が触れてしまうかもしれないな、とも思う。
大学闘争のバリケードの中でボクが立て篭っているときにライターのAさん(女性)と編集者のTさん(男性)が2人で陣中見舞いに訪れ、差し入れを届けてくれたふたりと握手して、お互いに頑張ろうと挨拶をして別れたことがあった。いったいボクは何と闘っているのだろう?さすがに1960年代末の学生運動の頃は子供だったので、それを直接に知ることはない。しかし北井一夫さんが撮影したバリケードの中の写真にちょっと似ていたような気もする。かと思えば、今朝のボクはリニューアルした渋谷パルコの前の公園通りを渋谷区役所の方へ全速力で走っているのである。上り坂である。あるいは、撮影スタジオのような場所で撮影されるのを待っているキムタクを撮ろうとしているのだが、いつまで経ってもカメラにフィルムが装填出来ず、ボクはただひたすら無言でキムタクと対峙し、カメラとフィルムと格闘を続ける。高校の同窓会に出席していて、その出席者全員が現在の知り合いで、その現在の友人たちはボクの高校時代を知るはずもないのだが、彼らと思い出を語り合う、ということもある。

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それぞれの夢の辻褄はまったくあわないのであるが、理不尽とか不自然な感じもしないのである。当然のようにバリケードの中にボクはいて、当然のようにキムタクと対峙し、当然のように兵庫県立宝塚高校のU先生やO先生のことを話しているのである。夢って本当に面白い。

あれはなんだろう、なんだろう

さて、成人の日の○○ですが、その3日後の朝、少し二日酔いで気味で目が覚めて、二度寝したのですが、そのときに、あれはなんだろう、なんだろう、と考えてウトウトしていると、何とほぼ同じ内容の夢を見てしっかり思い出しました。ボクは「両替」していたのです!
高額紙幣を細かくするやつじゃなく、ある通貨を別の通貨に、というアレです。何と何を何のために両替しているのか、さっぱりわからないのですが。

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――2月25日につづく。

文・写真:大森克己

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大森 克己(写真家)

1963年、兵庫県神戸市生まれ。1994年『GOOD TRIPS,BAD TRIPS』で第3回写真新世紀優秀賞を受賞。近年は個展「sounds and things」(MEM/2014)、「when the memory leaves you」(MEM/2015)。「山の音」(テラススクエア/2018)を開催。東京都写真美術館「路上から世界を変えていく」(2013)、チューリッヒのMuseum Rietberg『GARDENS OF THE WORLD 』(2016)などのグループ展に参加。主な作品集に『サルサ・ガムテープ』(リトルモア)、『サナヨラ』(愛育社)、『すべては初めて起こる』(マッチアンドカンパニー)など。YUKI『まばたき』、サニーデイ・サービス『the CITY』などのジャケット写真や『BRUTUS』『SWITCH』などのエディトリアルでも多くの撮影を行っている。