さすがに毎日は無理だけど、週1回ならがんばれるかな(仮)
ハロー、2020。

ハロー、2020。

永寿嘉福。令和最初の1月1日が、みなさまにとって素敵な1日になりますように。2020年が、みなさまにとって素晴らしい1年になることを祈っています!

元日の朝、父とじいちゃん(祖父と書くのはなんだか違う気がして)と妹と、恒例の初詣でに出かける。
神社は家から車で10分ほど。その間、母と祖母(ここはばあちゃんじゃないような気がして)は、家に残って雑煮の準備をしている。いつも、そう。
初詣でに行く直前、ふたりはそれぞれ、これ私の分と言って、御賽銭用の小銭を僕らに託す。
何をお願いすればいいの?
僕と妹が訊くと、決まって母はみんなの健康と言い、祖母はなんでもいいと答える。

神社でお詣りが済むと、いつも同じ場所で記念撮影をした。雪でも雨でも曇りでも、必ず父は4人で写真を撮った。

小学生の頃、境内に並ぶ屋台の綿あめを、じいちゃんにねだったことがある。
「正月から金を使うと金遣いの荒い年になるから、やめれ」
そう言って、買ってもらえなかった。けれど、なんとなくそういうものだと思って、あきらめた。

その帰り道、じいちゃんは道沿いに並んだ自動販売機を指差して、カップ酒と煙草を買って来いと僕に財布を放った。
「お金、使っていいの?」
素朴な疑問を口にすると、じいちゃんは言った。
「今年は金遣いの荒い年になるろ。酒も煙草もいっぱい飲むろ」
隣で父が笑っている。そういうものかと思って、僕はカップ酒と煙草を買いに走った。

じいちゃんは、もういない。祖母も、この世を去った。僕は故郷を離れ、妹は嫁いだ。父と母はふたりで暮らしている。
年末年始に僕や妹が帰省してもしなくても、1月1日の朝、父は初詣でに出かけ、母は雑煮の準備に勤しんでいる。
変わったと言えば変わった。変わっていないと言えば変わってない気もする。

元日にお金を使いそうになると、あのときのことを想い出す。
財布からお金を出す瞬間、ちょっとためらう。けれど、結局、買い物をする。そして、今年は金遣いの荒い年になりそうだと、気を引き締める。
酒を飲もうとすれば、やっぱり、あの日のことが思い浮かぶ。
不思議と酒に関しては逡巡することがない。飲む。今年もいっぱい飲んじゃうなぁって、浮かれながら。

2020年、果たしてどんな年になるのやら。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

dancyu web編集長 江部拓弥
写真:鈴木泰介