プロたちが目利きを競う豊洲市場から第一級の食材を仕入れませんか。豊洲に本拠を置くdancyu.comのバイヤーが仲卸の協力を得て厳選した食材をお届けします。
豊洲と言えばやはりマグロ。活気あふれる競りの様子や、競り落としたマグロを見事な包丁さばきでブロックに解体していく仲卸の仕事をテレビ映像などで目にした人は多いだろう。
天然本マグロ(クロマグロ)の極上品は、最高の素材を求める鮨店や日本料理店などがブロック単位で買い付ける。そこに一般の消費者が出る幕はない……はずだったが、最近はちょっと事情が変わってきた。背景にあるのは養殖マグロの生産拡大と高品質化だ。
餌の種類や与え方、水揚げ・出荷時の手当を工夫することで、養殖マグロの品質は格段に向上した。国内で消費される本マグロの実に7割が養殖もの。今やスーパーだけでなく百貨店や有名飲食店でも養殖マグロを扱っている。市場関係者にも養殖マグロを悪く言う人はいない。安定供給こそが市場の役割であり、需要に応じて計画供給できる養殖ものはなくてはならない存在だからだ。
養殖マグロの高品質化と生産増によって、プロたちによる天然本マグロの争奪戦はかつてと比べると幾分か沈静化した。その結果、一度も凍結していない生の極上ものを市場から手に入れるチャンスが一般消費者にも巡ってきたのだ。
品質の上がった養殖ものだが、それでもやはり、天然ものの旨味の深さと噛みごたえは格別だ。自然の餌を食べ、休むことなく泳ぎ続ける天然のマグロは身が締まり、旨みの強い身質になる。養殖ものは脂の乗りが強く、赤身もピンク色がかるが、天然ものは大トロや中トロ、赤身の色合い、風味、歯ごたえに違いがはっきり出る。
そんな天然本マグロを生のブロックでお届けする。協力してくれるのは豊洲市場のマグロ専門仲卸「米彦」。マグロ一筋の仲卸が用意したのはまさにプロ仕様。ブロックの断面の鮮やかさは芸術品のようだ。
仲卸がマグロを選ぶ基準は第一に見た目。尾の断面の脂の乗りと、腹の厚さや色味、微妙な肌感から良し悪しを判断する。知識も動員する。海上での漁師とマグロの格闘はときに数時間にも及ぶ。そのストレスと体温上昇が「焼け」と呼ばれる品質劣化を招く。仲卸は、漁獲海域や漁船名から、獲った時の状況やその後の手当を推し量る。使い古された言葉ではあるが、長年の経験と勘がものを言う世界だ。
専門家が厳選したマグロを皮つきの大きなブロックでお届けしたいと思ったのは、その方が間違いなくおいしいから。マグロに限らず魚は空気に触れる面積が増えるほど劣化が早まる。おいしい状態を保とうすれば、重量当たりの表面積が小さくなる皮つきブロックは理に適っている。今回、用意したのは京都の料亭や、都内の高級鮨店が買う極上品で、都内の百貨店でもなかなかお目にかかれないレベルのものである。
では、どんなブロックを買えばよいか。マグロの部位について簡単に説明しておこう。
中骨より上の部分を「背」、下の部分を「腹」と呼ぶ。また、エラから背びれの部分を「カミ」、真ん中を「ナカ」、背びれから尾にかけてを「シモ」と呼ぶ。従って「腹カミ」と言えば、中骨より下側でエラから背びれにかけての部分になる。
背側は、内部が赤身で皮側が脂の乗った中トロになる。腹側はカミの方ほど脂が強くなる。大トロが多く含まれるのは腹カミの部分だ。脂がたっぷり乗ったトロ好きなら腹カミや腹ナカを、脂よりも赤身の旨味を求めるなら、背側を選べばよい。
ブロックで手に入れたマグロをさくに切り分ける方法は、下に紹介する動画やネット上に数多くある指南ページを参考にしてほしい。慣れないうちは少々不格好になるかもしれないが、そこはご愛敬。事前に包丁をよく研いでおき、途中でついた脂も布巾できれいにふき取れば、気持ちよく切っていける。
ブロックをさくに切り分けるプロの包丁さばきをご参考に!
さあ、あとは天然マグロの美味を堪能するだけ。2kgのブロックなら、血合いと皮を取り除いた後、個体差はあるが、1.8kg程度の可食部が残る。標準的なサイズ(15g)の刺身にして120切れ分!
大勢で集まってマグロ尽くしパーティーなんてどうだろう。
文:川口若菜