観光客の知らない浅草~浅草高校・国語教師の浅草ランチ・ベスト100~
「カルボ」で焼きスパをむさぼる!|神林先生の浅草ランチ案内③

「カルボ」で焼きスパをむさぼる!|神林先生の浅草ランチ案内③

東京都立浅草高校夜間部(正しくは、昼から夜の授業を担当する三部制B勤務)国語教師、神林桂一さんによる浅草エリアのランチ案内です。自身がつくるミニコミに、足で探し、食べて選んだ「浅草ランチ・ベスト100丼」を選出。第2軒目は麺類部門から“ロメスパ”の紹介です。

「麺類部門」に「ロメスパ」がランクイン。

麺類の2軒目はスパゲッティ、それも「ロメスパ」だ。ロメスパとは何かを知るには、まず「路麺」について語る必要がある。
路麺とは「路傍の麺」の略で、大手チェーンではない立ち食いそばのことを指すネット生まれの言葉だ。「立ち食い」と言いながら椅子を導入する店が主流となってきているなか、都合のいい、気の利いた呼び名だと思う。実は、僕は麺類の中では最も頻繁にお世話になっており、チェーンも含めると今までに153軒食べている。

神林桂一先生
飲み・食べ歩きに情熱を燃やす神林桂一先生。「ロメスパ」にも強い思い入れを持つ。

そんな僕が選ぶ「浅草・路麺四天王」は次の通りだ(残念ながら酒類は置いていない)。
① 千束「山田屋」:「ランチ・ベスト100」に選出。ゲソ天最高峰。細うどんやきしめんもある。
② 千束「ねぎどん」:店名は「根岸さんがつくるうどん」の略。そばは手打ち。「山田屋」と人気を二分。
③ 三ノ輪「峠の蕎麦」:信州から取り寄せる生そばを使用・そばと牛スジどて煮丼のセットが人気。
④ 浅草「文殊」:浅草地下街入口の椅子も壁もないリアル立ち食い・両国に本店。

ミニコミ
「浅草の深き食文化を伝えたい」という情熱から、神林先生が独自の視点で偏愛店をランキングするミニコミ。マークの意味は、★=増税後も値上げなし、歴=歴史あり、味=味よし、人=人よし、雰=雰囲気よし、独=独自性あり、女=女性に推薦、C=コスパよし。
神林先生の「浅草ランチ・ベスト100」」麺類部門より。
(ランキングは、テーマや先生の独断で変動することも多分にあります)
▼53軒目「浅草 角萬」
東京・竜泉の「カドマニスト」の聖地を2018年に継承。手打ち極太冷し肉南蛮が看板メニュー。
▼54軒目「山田屋」
自家製麺。ゲソ天細うどんは「ゲソてん最高峰」と評価される。
▼55軒目「スパゲッティストア カルボ」
2010年開業。今回の記事で詳しく紹介。
▼56軒目「阿吽 浅草店」
2015年開業。担担麺専門店。ラー油の辛さと花椒のしびれ度を0~6で選べる。湯島に本店。
▼57軒目「526(こじろう)」
2017年開業。渋谷「526」(元「二郎 武蔵小杉店」)の女将が営む。かす入極府との焼きそばが名物。
▼58軒目「福ちゃん」 
1964年開業。浅草地下街入口にある名物店。ソース焼きそばに目玉焼きをプラスできる。

本題に戻り「ロメスパ」だが、これはご想像の通り「路麺のスパゲッティ」だ。注意すべきは、あくまで「スパゲッティ」であって「パスタ」ではないということ。イタリアにはスパゲッティの他に、太さによってカッペリーニ、フェデリーニ、スパゲッティーニといった種類があることは、もちろん知っている。
だが、ここで「昭和からのスパゲッティマニア」(以後「スパゲッティオヤジ」)が言わんとしているのは、80年代後半・バブル期の「イタ飯」ブームで広まった「アルデンテ」のパスタではなく、戦後日本発祥のゆで置き麺を炒める「ナポリタン」などのスパゲッティのことだ。スパゲッティオヤジの時代には、洋食店でも喫茶店でもスパゲッティと言えばこれだった。

「カルボ」のナポリタン
「カルボ」のナポリタン。この太さ、ボリューム、モチモチ感!これぞロメスパだ。

ロメスパは、この伝統を守りつつ進化した東京発祥の「ご当地麺」であるといっていいだろう。ロメスパの定義は次の3点だ。
① ゆで置きスパゲティをフライパンで炒めて提供する。待ち時間の短縮という面もあるが、手抜きではなく、独特のモチモチ感を出すためにわざとそうしているのだ。
② 極太麺を使用する。ボリューム満点。細麺では物足りない。
③ デカ盛りが可能なこと。麺の量が増えても、提供時間に差は出ないため。

ロメスパは9軒食べているが、ロメスパの横綱(残念ながら酒類は置いていない)と言われるのは次の2店だ。
① 大手町「リトル小岩井」:1972年創業・元祖ロメスパ・女性はほとんど持ち帰り
② 有楽町「ジャポネ」:1980年創業・ロメスパの聖地・ほぼ男性客・350g~1,100g

「カルボ」には、他のロメスパと違う個性がある。

「カルボ」は2010年開業。2017年には雷門1丁目に2号店を出した。オーセンティックバーの浅草「FOS」(2001年開店)も手掛ける森崇浩(たかひろ)さんがオーナーだ。観音裏の古民家バーとロメスパ。懐の深い人物だ。

浅草のロメスタ「カルボ」には、老若問わず幅広い年齢層の客が集う。
食券
注文は食券式。トッピングも多彩でラーメン店ぽい?

メニューは、カルボ、ミート、ナポリ、ミカド(和風)、月替わりの5種類。レギュラーの4種にはいずれも隠し味に醤油が使われている。
量は、小200g、中400g、大600gが基本で、通称「山」の1,000gまで選べる(ちなみに乾麺1束100gをゆでると240gだが、同じ重さに対してゆで置きの方が麺量は多い)。
ゆで麺に油を絡ませ、1日置いて、よりモチモチ感を出している。

カルボ
断トツの人気を誇るカルボ(中)800円。
ナポリ
焼き付けた麺の香ばしさが際立つナポリ(中)800円。
ミカド
ミカド(中)800円にはベーコン、シメジ、にんにくの芽が入る。

「カルボ」には、他のロメスパと違うスパゲッティオヤジ絶賛の個性が5つある。

『あいうえお作文』で紹介しよう」。

 【カ】「カルボナーラをメインに」。
他店では珍しい。炒めると玉子がダマになってしまいがちなのだが、独自に研究を重ねてそれを解消した断トツの人気メニューだ。

 【ル】「ルーテイン(決まった手順)は『焦がす』こと」。
よりしっかりとスパゲッティに火を通すことでカリカリ感を出している。それによって香りも増し、モチモチ・カリカリの食感が愉しい比類ないスパゲッティを生み出した

 【ボ】「ボン!と豪快にトッピング」。
粉チーズ、焼きマヨ、味玉、バラ豚(とん)など、ラーメン屋のようにトッピングが豊富な点。イタリアでは一般的な「モーリカ」をアレンジした「チーズパン粉」も卓上に常備されている。

 【ス】「スパゲッティなのにお箸!」。
箸が用意されているのがうれしい! 香ばしいカルボのスパゲッティは、焼きそばのように箸で啜り上げるのが最高。

 【パ】「パパ・ママだけでなく、子供にも人気!」。
女性客や、休日は家族連れも多い(オフィス街じゃないもんね)。

油と塩水とにんにくで麺を炒める。
強い火力でしっかり炒める。もはや中華料理!?
フライパンをあおり、仕上げにマーガリンを投入する。

厚切りベーコンセット
トッピングの一部、厚切りベーコンセット400円。
「チーズパン粉」「ガーリックオイル」などで味変も可能。
神林先生
フォーク以外に箸も用意してある。神林先生は箸派。

店長の髙橋一貴さんは、トッピングで自分好みの味を見つけてほしいという。
「粉チーズ ダブル、焼きマヨ ダブル、麺よく焼き」などと、「ラーメン二郎」のような注文ができるようになれば、あなたも立派な「カルボニスト」の仲間入りです。

スパゲッティ
カルボに厚切りベーコンセット(厚切りベーコン、味玉、焼きマヨ)をトッピング。もはやスパゲッティの枠を飛び出したスパゲッティだ。

――つづく。

<本日のお会計>
カルボ(中)800円。
<昼飲み&夜の部情報>
昼も夜もメニューは同じで、ビール、レモンハイ、ハイボールのほか、ワインはグラス、デキャンタ、ボトルまである。

店舗情報店舗情報

スパゲッティストア カルボ
  • 【住所】東京都台東区浅草3-42-6
  • 【電話番号】03-5603-0203
  • 【営業時間】11:30~14:30、17:30~22:00
  • 【定休日】火曜
  • 【アクセス】つくばエクスプレス「浅草駅」より4分

文:神林桂一 写真:萬田康文

「カルボ」で焼きスパをむさぼる!|神林先生の浅草ランチ案内③

神林 桂一(都立高校国語教師)

教員生活42年。食べ歩き、飲み歩き歴は45年。10年前の都立一橋高校(馬喰町)時代から食のランキング・ミニコミを刊行(おもに職場で配布)。下町エリアを中心に酒場、定食屋、バー、和・洋・中・その他のエスニック料理店と守備範囲は広いが、なかでも“お母さん酒場”には並々ならぬ情熱を持つ。食にまつわる書籍、雑誌、テレビ番組、一般的なランキングサイトなど、リサーチにも余念がなく、自作のデータベースには行った店・約9,200軒を含む1万5,000軒。の店や食の情報が整理されている。毎日早朝6時、デッキや外付けHDD計4台に録りためた番組をチェックすることから1日が始まる。