「Shinfula」10個のケーキ。
ポワール|「Shinfula」のケーキ②。

ポワール|「Shinfula」のケーキ②。

中野慎太郎シェフが披露するふたつ目のケーキは「ポワール」。秋の果実の洋梨と甘酸っぱいグリオットチェリーを合わせることは、ケーキづくりではよくある組み合わせ。定番の食材も、中野シェフの手にかかるとまったく新しい味わいへと変化する。

王道を新感覚で表現するということ。

洋梨とチョコレートとグリオットチェリー。ケーキでは王道の組み合わせながら、中野慎太郎シェフの手にかかれば新感覚の美味しさになる。

ラ・フランス風味が豊かなムースの中には、コンポートにした洋梨が入った定番の構成と思いきや、さにあらず。洋梨はレモン果汁でソテーしてある。キリッとした酸味をつけることで味の輪郭をはっきりさせようと考えてのことだ。些細な手間だが、口に含むとレモンの酸味なしではこのケーキは成立しないとさえ思える。

また、洋梨の下に敷いたチョコレートの存在感が素晴らしい。ケーキの表面を覆うグリオットのピューレと共にムース全体の味を引き締め、インパクトのある味わいに仕上げている。

ケーキの断面
上からグリオットチェリーのピューレ、ラ・フランスティーのムース、洋梨のコンポート入りジュレ、グリオットチェリー風味のガナッシュクリーム、ダコワーズ生地。

洗練と温かみのあいだ。

「ジョエルロブション」「NARISAWA」とトップクラスのグランメゾンで研鑽を積んできた中野シェフ。とりわけ「NARISAWA」では、世界のトップシェフらと関わることも多かったはずだ。独創性の高い成澤由浩シェフのもとで、最先端の料理感覚を学んだその経歴を見れば、さぞかし尖ったケーキを打ち出しているのでは?と思っていた。

ケーキを作る様子
「Shinfula」ではムースで形取ったケーキが3~4種類ほどある。どれも特徴的な型にムースを流し込んで、冷凍することで独創的な形になっている。

意外にも彼のつくる菓子には不思議な温かみが感じられたのだ。そんなことを考えつつケーキを口にすると、必ず、あっ!と目を見張る想定外の仕掛けに気づく。定番の組み合わせには、中野シェフらしいアイデアが潜み、一見斬新な構成のケーキには誰もが慣れ親しんだ味や香りを忍ばせるなど、最初から最後まで飽きさせない驚きと発見が新しい。

それらが、ひとつのケーキの中で見事に調和していることが素晴らしい。すべてを一緒に口にしたときの味わいのハーモニーは、一皿のデザートを食べた後の余韻とどこか似たものがある。

ケーキ
「ポワール」は605円。キュートな外見と甘酸っぱい味わいは女性客に大きな支持を受けている。

――2019年11月29日につづく。

店舗情報店舗情報

Shinfula
  • 【住所】埼玉県志木市幸町3-4-50
  • 【電話番号】048-485-9841
  • 【営業時間】11:00~19:00
  • 【定休日】月曜、不定休
  • 【アクセス】東武東上線「志木駅」より16分

文:森脇慶子 写真:馬場敬子

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森脇 慶子(ライター)

高校時代、ケーキ屋巡りとケーキづくりにハマってから食べ歩きが習慣となり、初代アンノン族に。大学卒業後、サンケイリビング新聞社で働き始めたものの、早々に辞めて、23歳でフリーとなり、食専門のライターとして今に至る。美味しいものには目がなく、中でも鮎、フカヒレ、蕎麦、スープをこよなく愛している。