僕は「食いしん坊」でありたいと思っている。「グルメ」が美食を極める人であるならば、食いしん坊は食をとことん楽しみたい人、だと思う。
料理の味はもちろん、店の雰囲気や会話も含めて食事を楽しみたいし、食材の産地や生産者に想いを馳せたり、器や道具、調味料、あるいは音楽など、食にまつわるいろいろなことを知りたい。A級もB級も、新しいか古いかも関係なく、「いま本当に楽しい食」を求めたい。
さらに、隣の人と同じ値段を払って同じものを食べるとしても、ちょっとした食べ方や店の人との会話などによって、隣の人より美味しく、楽しくできると思っている。ちょっと面倒臭いように思われるかもしれないが、ただ自然体で食を楽しみたい!
と思っているだけ。
逆に、いま食の世界がちょっと面倒臭くなっているように思いませんか?
人気店の何カ月も先の予約を頑張って取ったり、星や数字で行く店を決めたり、行列ができる店に行列をしてみたり。もちろん、そうした楽しみ方も否定はしない。ただ、食いしん坊としては、もうちょっとシンプルに楽しみたい。最新トレンドを追うより、今日食べて美味しくて、明日も食べたくて、十年後もきっと楽しい、そんな味を求めたい。
そこでdancyuでは、「食いしん坊倶楽部」を立ち上げた。食いしん坊たちで、日本の食をもっと楽しくできたらいいな、と思って。共感していただける方は是非参加してください!
ちなみに、写真は僕が大好きなパンコントマテ。スペイン・カタルーニャの郷土料理で、パンにトマトをこすりつけて、オリーブオイルと塩をかけるだけ。素朴だけれど、毎日食べたくなる。日本人にとっての味噌汁のようなものだ(味噌汁と同じようにつくる人によって味が異なる)。そんなフツーの美味しさが楽しい、と思う。
※この記事はdancyu2019年8月号に掲載したものです。