「ロックはあるけど、ロールはどうしたんだ」。その昔、キース・リチャーズさんは言ったそうですが、1969年生まれの身としては、ロールよりもやっぱりロックだなぁ。
「いつも、何時に起きるんですか?」
ちょっと前のこと、ちょっと飲んで駅までの帰り道、僕よりひとまわりちょっと若いデザイナーさんが何気なく訊ねてきたんですね。
「そんなこと、興味あんの?」
僕は身構えて訊き返します。どうやら、興味があるのは僕ではなく、編集という仕事みたい。独立したばかりの彼は、編集者の日常をちょっとでも知っておきたかったんですね。
「6時9分」
僕は答えます。意外と早くて、中途半端な時間。彼は冗談だと思ったらしく「またまたぁ」なんて笑ってます。いやいやホントなんだってば。
僕はちょっと前から、目覚まし時計を6時9分にセットしている。
深い意味はないようで、ちょっとだけある。
6時9分に高らかに目覚ましが鳴り、一発で起きると「今日はロックな1日だぜ」とか「今日のオレはロックだぜ」とか、適当に自分を鼓舞&肯定して、その日が始まる。
もうちょっとだけ。そう思いながら、目覚ましのアラーム音を速攻で消して再び眠りに入ることもある。ジョン・ライドンのように「ロックは死んだ」なんて嘯きながら、二度寝。まぁ、どちらかと言えば、そっちの方が多いんですけどね。
起きられないことを承知で、僕は毎朝、6時9分に目覚まし時計を鳴らす。
なんてことを話したら「かっこいいっすね。ロックを感じますね」と、彼はえらく共感していた。いいのかな?編集者の日常は、こんな感じで。ちょっとだけ不安。
僕らは、そのまま駅前のラーメン屋さんに吸い込まれて、彼は自販機でラーメンのボタンをポチ。
「おぉ、690円です!ロックです!元気になります」
僕も迷わず、690円のラーメンをポチ。おぉ、なんだか元気になった気がするぞ。
ちょっとしたことで、いつもの風景は変わって見える。
今日は6月9日。ロックな日曜日でありますように。
dancyu web編集長 江部拓弥
写真:西郡友典