日本のワイナリーを巡る。
稀少な石灰岩土壌が育む瀟洒なワイナリー。

稀少な石灰岩土壌が育む瀟洒なワイナリー。

岡山県新見市の哲多町にある「domaine tetta(ドメーヌテッタ)」は、誕生から3年あまりの比較的新しいワイナリー。ワインの品質はもちろん、その洒落た建物やユニークなキャラクターも注目を集めている。

世界の銘醸地に似た土壌が岡山にあった。

ワイナリー風景

2016年秋、岡山に誕生したdomanie tettaは、ワインはもとより、トップクリエイターが手がけた建物やワインラベルなども話題だ。持ち前の発想力で夢を形にした創業者の高橋竜太さんにお話を伺った。

岡山県北の山間、新見市哲多町にあるdomanie tettaは、自らぶどう畑を所有し、栽培から醸造、熟成、瓶詰めまですべてを自分たちで行うドメーヌ・スタイルのワイナリー。
この地域は、日照時間が長く寒暖差があるという、ぶどう栽培に適した環境に加え、フランスのシャブリ地方など世界の銘醸地に似た、稀少な石灰岩土壌にも恵まれている。

ワイン
エチケットデザインを手がけたのは、サカナクションのアートワークなどで知られる平林奈緒美さん。パンダを筆頭に愛らしいイラストで展開されている。
ワイン樽
「domanie tetta」を切り盛りするのは、高橋竜太さん。ワイン造りとは無縁の人生から一転、国内でも類を見ない手法でワイナリーを運営することに。

栽培は減農薬で、除草剤を使わない草生栽培。醸造に関しては、野生酵母でゆっくりと自然発酵させ、粗いろ過のみで瓶詰めするなど、できるだけ余計なものは加えず、ぶどうが持っているパワーに任せたワインづくりを心がけています。そうすることで、日本では珍しいこの石灰岩土壌を含めた『tettaらしさ』が表現できると思うので

ワイナリー設立への道のりが始まったのは、今から10年以上前のこと。建設業が本業の高橋さんが、閉園の決まったぶどう農園を引き継いで、生食用ぶどうの栽培と販売を手がけることを決めたのだ。

ぶどうづくりの勉強をする中で、自分たちの畑がワイン用ぶどうの栽培に極めて適した環境であることを知って、自然と目指すべき方向が見えてきました。ワインに関する知識がほとんどないのに、ゴールは最初からワイナリー設立(笑)。今にして思えば、ワイン業界のことをまったく知らないからこそ、大胆なチャレンジができたのかもしれませんね

ワイナリー外観
山道を車で走っていくと、美術館のような、はたまた要塞のような建物が突然に姿を見せる。まさか、ここでワインが造られているとは、夢にも思わないよなぁ。

ワインづくりを統率しているのは、栽培兼醸造責任者の片寄広朗さん。元ソムリエで、フランスのブルゴーニュとシャンパーニュで計6年間、本場のワインづくりを学んだ経験の持ち主である。驚くべきことに、ぶどう栽培やワインの醸造に関して、高橋さんが片寄さんに指示を出すことはほとんどないという。

僕の好みを押しつけたら、片寄の個性がなくなってしまいます。明らかに彼の方がワインに関する経験値が高いので、すべて任せています。僕は純粋な飲み手として、どんなワインができあがるのか毎年楽しみにしている感じですね。完成したら、そこからが僕の出番。一人でも多くの方に我々のワインを届けるために、知恵を絞ります

何度も足を運びたくなる魅力的なワイナリーにしたい。

さながら美術館のようにスタイリッシュな醸造所も、domanie tettaの大きな魅力。その建築デザインとインテリアデザインを手がけたのは、世界的に活躍するインテリアデザイナーであるWonderwall®の片山正通さんだ。故郷である岡山でのプロジェクトに参画するのは、初めてのことだという。
醸造スペースの壁面には、海外の現代美術作家による現代アートを展示。ワイナリーを訪れた人たちは、その非日常的な光景をカフェの店内からガラス越しに眺めることができる。

ワイナリー設立を考えた当初は『ワインづくりの作業は、既存の出荷場を利用して行えばいい』と思っていました。新潟のカーブドッチや、富山のセイズファームといった上質で個性的なワイナリーを見学するうちに、『たとえアクセスのよくないロケーションであっても、ほかにはない魅力を持ったワイナリーをつくれば、多くの方々が足を運んでくれる』と確信できるようになり、思い切って片山さんに設計を依頼しました

ぶどう畑
ぶどう畑には、未来のワインへと繋がる若きぶどうの木がお行儀よく並んでいた。さまざまな品種を植えて、可能性を探っていく。
作業する人
春。新たなぶどうの苗木を植える作業が行われていた。地元のボランティアの人たちが、せっせと土と向き合っていた。

現在、domanie tettaの畑では、シャルドネ、マスカット・ベーリーA、カベルネ・フランといった主力品種を中心に、試験栽培も含めると約30品種のぶどうを栽培中だ。

この土地にどの品種が適しているのかを、はっきり判断できるのは、おそらく何十年も先のことでしょうね。最初から品種を絞ってワインづくりをするワイナリーもあれば、僕たちのようにいろいろな品種を植えて、さまざまな栽培の経験を積み重ねたいと考えるワイナリーもあっていいと思うんです。醸造についても、試行錯誤の連続。ひとつの品種について、いろいろな造り方を試しているので、ワインのアイテムも多くなっています。いずれは『テッタといえばこれ』となっていくとは思っています

醸造責任者の片寄広郎氏。tettaの稀有な土壌に惚れ込み、家族で大阪から移住。
譲り受けた畑からみつかったパンダの置き物。畑の守り神として、入口で訪問客を迎えてくれる。
レストランからグラビティフローシステムで製造している様子がみられる。
ジャケ買いならぬ、ラベル買いをしてしまうほど、魅力的なラベル。tettaの名物・物語をイラストで展開

繰り返し足を運んで、現在進行系の進化や深化を味わいたい。そんな思いを抱かせる、希望に満ちたワイナリーだ。

カフェでいただける料理
併設するカフェでは、いっぱいに広がるぶどう畑を眺めながらのランチも楽しめる。昼からワインの贅沢な時間と空間が、ある。

ワイナリー設立をめぐるさらなるエピソードや栽培兼醸造責任者・片寄広朗さんのお話、そして「tetta cafe」の村上信人シェフがお薦めする白ワインと美味しいレシピを「シャーウッドclub」でお読みいただけます。詳しくは以下のリンクから。

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記事で紹介したワイナリー

domanie tetta

岡山県新見市哲多町矢戸3136
お問い合わせ TEL.0867‐96‐3658

文:木村美幸 写真:遠藤素子