U2に「God part II」という曲があります。当時、浪人していた僕は勉強もしないで「part I」にあたる曲を必死に探したものです。海賊版を漁ったりしてね。いまの時代だったら、検索すればすぐにわかったのになぁ。すべては徒労に終わります。だって「God」には「part II」はあっても「part I」は存在しないんです。エイプリルフールですけど、真実ですよ。
「イベさんですね」
あぁ、そうきましたか。目の前で素敵な笑顔を見せる店員さんに間違いを指摘するのは心苦しいのですが、もう一度だけトライしてみようと思います。
「エ、べ、です」
ゆっくり、はっきり、発音します。
「エベさん?」
そうです、そうです。さっきとは一転、怪訝そうな表情を浮かべる店員さんですが、いいんですよ、自信をもってください。
僕の苗字は、エベ。
一般的でないこともあって(僕の滑舌がよくないこともあるけれど)、口頭ですんなりと伝わらないことが、頻繁にあります。
イベを筆頭に、イデ、エデが誤変換のベスト3かな。
居酒屋を予約したときには、こんなことがありました。
電話では聞き返されることもなくスムーズだったんですけどね、いざ店に行ってみると「エベさまのお名前で予約は入ってないですね」。
そんなはずはないんだけどなぁ。店員さんが手にする予約ノートを覗き込んでも、本当にエベなる名前で予約がない。
おかしいなぁ。4名の予約でエベに似たような名前はないですかねと、店員さんと一緒にノートを探してみると、あっ。もしかしてを発見。
「エベデスさま4名」
異国人になってましたね。
仕事になると、さらにね、エベの前にはダンチュウやウェブがつくんですよ。電話の向こうで「ダンチュウウェブのエベです」なんて言われたら、知らない人にとってはカオスなんだろうなぁ。そう思いますね。
今日から新年度。新しい出会いが、ここにもあそこにも(あるといいなぁ)。
出会いの第一歩は、名前を憶えることから。きちんと名前を呼ばれると、嬉しいものです。
dancyu web編集長 江部拓弥
写真:岡本寿