d酒プロジェクトは2017年9月にスタート。どんな原材料を選び、目指す酒はどこなのか。松崎晴雄さんと藤田千恵子さんが中心となって考えてみたものの、設計図を描くように緻密に酒質設計を立てる蔵元や杜氏の気持ちになってみると、これがなんと悩ましいことか!
蔵元である尾畑酒造の平島健社長から、連絡があった。2018年の夏に酒を仕込むなら、2017年の9月中には酒米を決めてほしいと。1年前から酒米を仕入れる段取りが必要だという。学校蔵はオール佐渡産の酒造りを目指している。新潟の酒造好適米の越淡麗か、五百万石か。それとも山田錦か。さあ、どうする。
次に決めるのは、酵母。どのような酒を造るかは、香りや味わいに大きな役割を果たす酵母を選ぶと決まります。学校蔵では、新潟生まれのG9号の酵母を使っているけれど、さて、d酒は?
酒米は越淡麗。精米歩合60%。酵母はきょうかい14号。酒質設計のすべてが決まった。この日から約300日後に、仕込みがはじまった。
日本酒輸出協会会長。歴史をひもとき、日本酒の魅力を世界へ伝える日本酒界のマエストロ。各県の清酒鑑評会審査委員や、長野県や佐賀県の原産地呼称管理委員会官能審査員を務めるほか、「全米日本酒歓評会」「International Sake Challenge」などの国際的なコンペティションの審査員を担当。「日本酒ガイドブック」(柴田書店)など著書も多数。
文筆家。日本酒の造り手に魅せられ、全国各地の酒蔵を訪ねること30年以上。時代と共に変わりゆく日本酒文化、そして酒蔵に生きる人々の伝え手として、執筆活動を続ける。著書に能登杜氏・天保正一氏を取材した「杜氏という仕事」(新潮社)ほか、「雪の茅舎」の高橋藤一杜氏の酒造りを追ったノンフィクション「美酒の設計」(マガジンハウス)がある 。