四ツ谷で行列の絶えない「かつれつ四谷たけだ」のカキフライと、高田馬場で連日大賑わいをみせる「酒肴 新屋敷」のアジフライが、日曜日限定で合盛りになって登場!クリーミーで濃厚なカキフライと、どこまでも軽やかでみずみずしいアジフライの共演をお見逃しなく!
「ビーフトマト」などの名作で知られた伝説の洋食店「洋食エリーゼ」が、揚げ物を極めるために「かつれつ四谷たけだ」へと看板をかけかえたのは12年前。今ではカツレツはもちろんのこと、季節限定のカキフライを求める行列も絶えない。一方、彗星のごとく現れたアジフライスター「新屋敷」の盛況ぶりもまったく引けを取らず、日に日に人気は増すばかり。
たけだのカキフライと新屋敷のアジフライ。祭が開催される4月下旬、両者の食材の旬がわずかに重なる季節にこの奇跡の合盛りは実現する。さらにこの2人には、ひとかたならぬ縁があった。
「隼人は居酒屋である『新屋敷』を開く前にオーストラリアの和食店で働いていたんですが、その店のオーナーのテリーさんが僕の友人だったんですよ」と竹田さん。
しかし2019年に、2人をつないだ友人は病気で他界してしまう。亡くなった直後に「新屋敷』でテリーさんを偲びながら2人で飲んでいたら、「テリーさん、揚げ物好きでしたよね」と話し始めた池田さんに対して、竹田さんが「パン粉屋は紹介するから、やったらいいじゃん」と投げ返した。すると、傍らに置いてあったスマートフォンが返事をした。それも設定もしていない中国語で。2回も。
「亡くなったテリーさんは中国語が堪能だったんです。いきなりiPhoneが中国語で話し始めたとき『ほら、テリーさんもやれって言ってる』という話になりました。それから隼人は『新屋敷』は魚が売りの店なのでアジフライですかね! と、試作に本腰を入れるようになりました」
以来、池田さんはアジフライの研究に没頭する。素材には長崎・松浦産の刺身用アジを使い、衣づけや揚げ方に工夫を凝らした。偲ぶ会でも試作と試食を繰り返した結果、松浦港から直送される真鯵に刷毛で丁寧に小麦粉をまぶし、薄く溶き卵を、ふんわりとパン粉をまとわせるつくり方に到達。どこまでも軽快な衣に、瑞々しい身質という驚くべき食感のアジフライが生まれることとなった。
一方、パン粉の業者を紹介し繰り返し試食にも付き合った竹田さんは、身の入り、味の濃さとも最高となる今季最後、4月の三陸牡蠣を大胆かつ精妙に揚げまくる。クリーミーな風味に、凝縮感満点の味の濃さと身の入り。カキフライの衣にかぶりつくと、カリッと香ばしい衣の内側から、海の旨味があふれ出す。
わずかな旬の重なるこの季節に、伝説と新星が1日限りの運命的な邂逅を果たす。
※当日は内容や盛り付けが変更になる場合もあります。
文:松浦達也 撮影:伊藤菜々子、岡本 寿